研究実績の概要 |
有機金属化合物を出発材料とし、熱処理や電子線照射による有機物分解を経て金属酸化物を得る手法が知られている。本研究は、従来の熱処理等による分解反応ではなく、波長可変の赤外自由電子レーザーを用いて、有機金属化合物を分解し、最終生成物である金属酸化物の構造を任意に制御可能な技術の確立を目指すものである。最終年度であるH28年度においては、2~3元系の有機金属化合物からなる前駆体膜に赤外自由電子レーザーを照射し、分解反応を検証した。H27年度に開発した2軸制御が可能な照射装置を用いて、レーザー焦点距離、照射時間、照射回数を変えて照射した薄膜に対して、FT-IR,XRD,SEMを用いた構造評価を行った。その結果、レーザーのエネルギー密度が高い場合にはおいては、赤外光による非熱分解ではなく、アブレーション効果による分解が起こることが明らかになった。このアブレーションが生じない条件を探索するため、赤外光を透過するCaF2単結晶基板を用いるとともに、レーザー波長を連続的に変えて実験を行った。その結果、アブレーションが生じない条件下において、特異的に分解反応が生じる波長が存在することが明らかになった。さらに有機金属化合物層の形成と照射を繰り返し行うことによる積層化と、レーザー照射エリアの選択によるパターン形成に関しても確認することができた。以上より、赤外自由電子レーザーを用いた有機金属化合物分解は可能であり、波長を適切に選択することで有機物分解過程ならびにその高次構造の制御ができると結論付けた。
|