β-C3N4は体積弾性率が理論計算から427 GPaと非常に大きな値になり、ダイヤモンドの体積弾性率の実測値442 GPaに匹敵すると理論的に予測されているが、実験では実現できていない。本研究では、β-C3N4の合成を目的として、デュアルマイクロ波プラズマ化学気相蒸着(CVD)法による合成を試みた。デュアルマイクロ波プラズマCVD装置を開発し、炭素および窒素のラジカル源を独立制御することで、任意の組成の窒化炭素膜を成膜する手法を開発した。本年度は、プラズマ条件、ガス条件を制御することによって、反応を制御し、β-C3N4の合成を目指した。 炭素側原料ガスとしてCH4/Ar、窒素側原料ガスとしてNH3/Arガス、NH3/N2ガス、N2/Arガスの組み合わせで所定量のガスを導入し、マイクロ波プラズマによりラジカル・活性種を発生させ成膜を行った。さらに成膜時の基板を400℃まで加熱し、加熱の有無の影響を評価した。基板加熱の有無によって成膜速度に差が現れ、基板加熱することで成膜速度が速くなった。NH3/N2ガスで成膜した場合が、N/C原子比が最大となり、N/C原子比は0.38となった。XPSによるC1sピークの分析によりC-N、C=N結合に由来するシフトが見られ窒化炭素の生成を確認した。しかし、XRD分析より得られた窒化炭素膜はアモルファスであることが分かった。 結晶性のβ-C3N4が得られない理由として、基板との格子不整合に起因する転位や歪みによってβ-C3N4が安定に存在できないためであると考えた。そこで、格子不整合を解消するためβ-C3N4と同様の結晶構造を持つβ-Si3N4をバッファ層に利用し、β-Si3N4バッファ層上にSi-C-N傾斜組成層を形成させる材料設計指針を考案した。
|