本研究では微小隙間内面に窒化処理を行うことができる新しい窒化処理法を開発することが目的である。研究3年目の2017年度では、大きく分けて以下の3つの成果を得た。 1.直流グロー放電を用いたプラズマ窒化処理法において、試料バイアス電圧を制御することで化合物層の制御に成功した。これにより、窒化処理前の表面性状を維持することができるようになった。2.正バイアス電圧を試料に印加することで、エッジ効果が発生せず、試料表面を均一に窒化することができることが明らかとなった。3.本研究で開発した新しい方法では、1mmの隙間に対して深さ方向に3mmまで硬化させることに成功した。 研究期間全体として以下の成果を得た。 1.高周波および直流グロー放電を用いた2種類の新しい窒化処理法を開発した。2.高周波を用いた窒化処理法では0.6Pa程度の高真空中でプラズマ窒化を行うことに成功し、直流グロー放電を用いた窒化処理法では、従来の処理方法に比べて20%処理時間を短縮させることに成功した。3.各窒化処理法とも形成する窒化層の制御を行うことができ、処理前の表面性状を維持することに成功した。4.1mmの微小隙間まで内面を硬化させることができた。 以上のことにより、被処理物全体に対して処理前の表面性状を保ったまま、微小な隙間内面を窒化することができる新しい処理法の開発に成功した。このことにより、複雑な形状を有する工具や金型などに対して有効な処理法として今後行うことができ、その意義は大きい。
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