研究課題/領域番号 |
15K14191
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀顕 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (10581746)
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研究分担者 |
前田 正史 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70143386)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気分解 |
研究実績の概要 |
本年度は前年度に引き続き,チタンを含有した酸化物溶体を利用した電解を目指した.比較的低融点となる系を選択し,酸化チタンへのアルカリ金属酸化物の添加を基本方針とした.エリンガム図からも示唆されるとおり,熱力学的な観点からK2O や Na2O は TiO2 よりも優先的に還元されると予想される.一方,Li2O は TiO2 よりも還元されにくく,かつ融点を下げることが可能なので Li2O-TiO2 系に焦点をあて,擬二元系において 1100度で溶融状態となる組成で電気化学試験を行った.また,Al2O3 を添加した溶体を電解浴とする試験を実施した. 電気化学測定は,擬参照電極を用いた三電極法を用いた.擬参照電極の材質としては,酸化物融体に溶け込みにくい貴金属を利用した.また,容器にグラファイトるつぼを用いて対極とする電解方式と,容器に MgO を用いて MgO 飽和状態とした Li2O-TiO2-MgO 溶体を電解浴とする電解方式について検討を行った.作用電極は,実験温度よりも融点が高い金属のうち,チタンと合金を形成するものから選択し,板状に成形して用いた. サイクリックボルタンメトリーを行い,低い電位においてカソード電流が流れることを確認したのち,一定時間保持することにより電極反応の生成物を調べたが,反応後の電極上にチタンは確認されなかった.研究代表者らによる過去の研究においては,SiO2-Li2O 系融体の電解でケイ素の還元を確認しているが,チタンは同様には還元されない.この一因としては,チタンイオンが電解浴中で複数の価数を取りうることが考えられ,電位と価数の関係について詳細な調査が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が所属機関を変更し,研究環境および実験設備を新たに整備する必要があった.2016年度の前半は高温装置の立ち上げを行うとともに,薬品類を用いた実験環境を整えるのに費やしたため,計画に遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
多元系の溶体の電解浴を視野に入れ,効果的に還元を進行させる電解条件を探索する.とくに,試験温度における流動性や,電位条件の影響を調査する.また,還元されたイオンの価数と電位の関係について調査するとともに,イオンの制御方法について探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更により,当初計画していた電解試験を行うための装置準備に時間を要した.このため,実験回数が少なくなった.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に研究装置を整備できたため,予定していた研究を29年度に加速して進める.
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