本年度は前年度から引き続き,酸化リチウム-酸化チタン系融体を電解浴とする電気分解の調査を行った.前年度までは,グラファイトるつぼにより電解浴を保持し,これを対極とした実験を実施した.本年度は,ジルコニア系るつぼを用いて融体を保持し,これを固体電解質として利用する方法を探索した.ジルコニア内で溶融した酸化物融体には,金属線を浸漬してカソードとした.一方,ジルコニアを隔てて配置するアノードとしては,白金等の貴金属電極を接着して酸素発生を進行させることが標準的な指針と考えられるが,本研究ではアノードの状態を安定させながら酸化反応を進行させるために溶融金属の利用を試みた.ただし,例えば溶融した銀をアノードとした場合は固体電解質との界面で銀の酸化が進行し,ジルコニア内へ銀イオンが浸透・通過することが実験で示唆された.そこで,グラファイトるつぼ内で炭素飽和鉄をアルゴン気流中1200度で溶融状態とし,これにジルコニアるつぼを浸漬した.この炭素飽和鉄をアノードとすれば,溶質の炭素がジルコニアとの界面で酸素イオンと反応して二酸化炭素が発生する.これにより,アノードと電解質との接触を維持しながら界面で安定的に酸化反応を進行させるとともに,セルの周辺全体が還元雰囲気に維持されることを期待した.本手法を用いて,サイクリックボルタンメトリーで電解浴の電気化学的な反応を調査した.さらに,一定電位での電解を行い,電極上の生成物を電子顕微鏡で観察した.
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