研究実績の概要 |
希土類金属の電析プロセスは製錬分野でのみ実用化され、そこでは高温の溶融塩が用いられている。これに対し、素材表面への磁性薄膜の「電気めっき」や、希土類の簡便な「湿式リサイクリング」への応用が期待される室温の希土類電析は実用化が遠い。本研究では、電気化学安定性に優れ、低粘性と低揮発性をあわせもつ非プロトン性のグライム類を主溶媒、イオン液体成分を副溶媒(支持電解質)とする希土類電析浴の可能性を探った。 グライム類として、ジグライム (G2)、トリグライム (G3)、テトラグライム (G4) の3種類、希土類塩として LaCl3、YCl3、GdCl3 を選び溶解性を調査した。溶解性向上のため、AlCl3 や LiCl の添加も試みた。その結果、いくつかの組み合わせでは希土類塩濃度 50 mM 程度の浴を建浴できたが、浴の導電性が低くボルタモグラムは直線的であった。希土類アミド塩 R(Tf2N)3 を用い、支持電解質として TMPA-Tf2N(トリメチルプロピルアンモニウムのアミド塩)を添加したところ、浴の導電性は改善されたが、定電位カソード電解によって結晶性の希土類金属を得るには至らなかった。また、スルホン類の1つである EiPS(エチルイソプロピルスルホン)を溶媒に用いることも試みたが、電析物は得られていない。 以上の結果を受け、グライム系有機溶媒は希土類電析に適していないと判断し、別の系を探索することにした。ここでは Podlaha らの研究(Electrochim. Acta, 9, C199 (2006))をヒントに、水溶液からの多孔質シリコン(メソポーラスシリコン)電極への希土類合金電析を探索した。現時点で、多孔質電極上に Co と Tb からなる化合物皮膜を得ることに成功しているが、XPS 測定による酸化状態の調査や、浴の最適化が今後の課題である。
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