シリコンは単結晶,多結晶及びアモルファス状態で太陽電池用部材として広い分野で活用されている.しかし,シリコン原料の枯渇が懸念されており,インゴットの切削で生ずる切りくずの再利用,または切削工程を経ない新たな太陽電池製造プロセスの開発が急務となっている.本研究ではインゴット凝固に対抗しうる製膜法として,ファセット及びノンファセット合金をミスト状にして電極基板上に製膜させる方法を考案し,高性能マイクロ結晶太陽電池薄膜モジュール製造する技術の指針を見出すことを目標とした. まず,低融点合金として純スズ,純ビスマス及びスズ-ビスマス合金を溶融させてミスト粒子を得る条件を調査した.ノズル直径,位置,不活性ガス圧力,流速等のプロセス条件を変化させ,液体の吸引力及び液滴直径との関連性を調査した.液体の吸引力は噴射する不活性ガスの速度の二乗に関連して変化すること,この時,低速と高速では吸引力に及ぼす速度の影響が大きく変化することを見出した.平行して水モデル実験も行い,種々の密度を有する液体における吸引力の予測が行えられることを示した. また,ノンファセット及びファセット系結晶を有するスズ及びビスマス合金製膜試料を調査したところ,ノズルからの距離及び角度に依存してマクロスケールレベルでの膜厚の不均一性が生じた.均一に製膜するためにはノズルの移動及びノズル-ターゲット間の距離を制御することが必須と考えられた.特に,ノズル近傍で製膜された結晶は21ミクロンと比較的大きく,ノズルから離れるほど結晶は微細となった.これは,飛行中及び基板付着時における過冷度が大きくなったためと考えられた.合金について調査したところ,溶質元素のミクロ偏析は製膜試料の中心部で大きく,試料外周部で小さくなった.これは結晶微細化に寄与するものと考えられ,ファセット型結晶成長形態を有するシリコンにも応用できるものと考えられた.
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