研究課題
本研究の目的は,ナノ粒子のナノ構造変換型の抽出システムを創出することである。高濃度金属ナノロッドを凝集させることなく,製造・濃縮・抽出プロセスを一括で行うシステム開発を行った。初年度は,ナノ構造変換を伴うミクロ抽出システムの最適化を行った。抽出実験による透過型電子顕微鏡(TEM)の撮影の結果,球形の粒子がロット状に形状転換を引き起こしていることが明らかになった。ナノ構造変換の要因となりうる界面活性剤の濃度,原料となるナノ粒子のサイズ,pH等の条件を検討した。その結果,界面活性剤の濃度の影響が他の因子よりも大きく形状効果に影響を与えていることが分かった。また,抽出後のナノ粒子の形状分布,サイズ分布を検討した結果,粒子の大きさに関わらず,ロット状の粒子が形成していることが分かった。2年目は,再現性を担保する因子が重要になると考えて、球状からロッド状への転換機構を解明するための実験を実施した。その結果,界面活性剤は,非イオン性のポリオキシエチレン鎖とt-オクチルフェニルエーテル基を有する界面活性剤が最適であることが分かった。球状からロッド状への転換には,Caイオンと硫酸イオンが大きく関係した。銀ナノ粒子(AgNP)を添加したときのみに見られるロット状へのナノ構造変換において,AgNPはエッチングされて極微少量に存在した。一方で,ナノロットの主成分はエネルギー分散型エックス線分析(EDX)の結果から,硫酸カルシウムであることがわかった。最終年度は、ナノメートルサイズの物質の形態制御に着目した。AgNPを加えた場合,微小で一定形状,一定粒状のナノロッドを形成することができ,そのサイズは,長辺:89 ± 15 nm,短辺:25 ± 4 nmで高精度に制御することができた。誰もが簡便にできるワンステップ抽出操作により,100 nmの硫酸カルシウムナノロッドの粒子径を揃えて合成できた。
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