研究課題/領域番号 |
15K14202
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡野 泰則 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90204007)
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研究分担者 |
清水 一憲 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70402500)
重田 育照 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (80376483)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メゾスケール / 移動現象 / 数値解析 / 物質移動 / 流動 |
研究実績の概要 |
本研究は、10~100nmオーダーのメゾスケール空間内移動現象を解析しうる数値シミュレーターを開発し、現在未知な部分が多いナノ・マイクロスケールでの移動現象の特異性を実験と数値解析の両面により明らかにすることである。そのために申請者が現在開発を開始した(1)Landau-Lifshitz Navier-Stokes式に基づく数値シミュレーターを完成し、その結果を(2)分子動力学計算や(3)吸引圧法によるドラッグデリバリー実験と比較、検討を行い検証するものである。これにより10~100nmオーダーのメゾスケール空間内における拡散係数、粘度などの物性値の特異性や通常の流体内における流動性、物質移動との相違点を明らかにする。 そのために初年度はLandau-Lifshitz Navier-Stokes式と物質移動を連立させ、物質移動現象に及ぼす揺らぎや、見かけの物性値に及ぼす壁の影響について定量的に議論した。なお本年度はプログラミングに試行錯誤を行う可能性があるため計算が速い2次元で行った。これにより極微小空間内における分子揺らぎを考慮した解析に成功し、空間が極小化するに伴う流体中の熱搖動の効果を評価する新しい無次元数の提案を行った。 一方、ミクロの観点からメゾスケールにおける移動現象を解明するために、脂質二重膜が穴を形成する系に着目し、分子動力学を用いて数値解析を行った。脂質二重膜の引っ張りによる穴の形成を計算し、拡張速度によって穴が形成される際の膜の長さが異なるという結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Landau-Lifshitz Navier-Stokes式の数値解析コードは本研究申請時には既に開発中であったことと、分子動力学計算はこの分野の権威である共同研究者の参画により極めて順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は前年度に開発した2次元コードをお互いに比較検討し、コードの正確さを確認したのちに3次元へと拡張する。また分子動力学計算において、微小空間における界面張力と物質移動を伴う場合の界面張力値の変化について算出する。その結果をLLNS式の境界条件に導入し液―液界面を通しての物質移動(マランゴニ対流、あるいは界面汚染現象の有無)についての知見を得る。以上で開発した計算コードを用い、DDS実験のリアルサイズシミュレーションを行う。液―液界面における表面張力の効果や微小空間故に生じる拡散係数や粘性の異常性についても分子動力学計算で算出し、Landau-Lifshitz Navier-Stoke方程式に組み込む。実験結果との検証を通じ、これらの値を修正し実験結果と最も整合性の取りうる条件を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は2次元計算が主であったため、思いの外計算速度が速く、スーパーコンピューターの使用が不要だったことに加え、格納すべき計算結果も比較的小さく、大型データー用の高容量ハードディスク等を購入する必要が無かった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はまとめとして大阪-名古屋-つくばの旅費を使用するのに加え、10月には国際学会の参加(2名)を予定している。昨年度使用しなかったスーパーコンピューターを使用するために利用料金30万を支払うとともに、大容量データー格納用ハードディスクを複数台購入する予定である。
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