研究課題/領域番号 |
15K14203
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平井 隆之 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (80208800)
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研究分担者 |
白石 康浩 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (70343259)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / フォトクロミック分子 / 光化学反応 / サイズ制御 |
研究実績の概要 |
金属ナノ粒子のサイズを精密に制御することは極めて重要な課題である。本研究では、金・銀・銅をはじめとする金属ナノ粒子のサイズを「光」によって制御する新技術を開発する。金属ナノ粒子表面にスピロピラン誘導体を修飾し、ナノ粒子のプラズモン吸収波長に対応する光を照射する。粒子表面での光熱変換に基づくスピロピランの熱異性化によりナノ粒子を凝集させ、サイズを制御する新プロセスを開発する。さらに、異種のナノ粒子のプラズモン吸収波長に対応する光を照射し、モルフォロジーを制御したコアシェルおよび合金ナノ粒子を合成する新プロセスへ展開する。 平成27年度は、アミノ基を修飾したスピロチオピラン分子を用いる金ナノ粒子の凝集/分散制御法を研究した。金ナノ粒子を含む水溶液にアミノ基修飾スピロチオピラン分子を加えると、硫黄原子の金表面への結合によりスピロ環が開環する。この際、正に帯電したインドリウム部位が生成することにより粒子表面で正電荷を帯びる。このため粒子同士の斥力が弱まり、凝集が進行する。粒子の凝集は加えるスピロチオピラン分子の量に依存するため、添加量を変えることによりサイズの異なる粒子を自在に合成することが可能である。また、生成した粒子の粒径分布は小さく、単分散粒子を合成できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スピロチオピランの自発的開環を利用することによりナノ粒子表面の電荷を制御し、ナノ粒子の凝集/分散を制御できることを明らかにした。スピロチオピラン分子は紫外線照射に対しても開環するフォトクロミック性能を有するため、本分子の特性を応用すれば、光化学的なナノ粒子合成プロセスの開発が可能になると考えられる。それゆえ、区分②に該当すると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最近我々は、安息香酸およびその誘導体を金属塩とともに水に溶解させて紫外光を照射することにより、ナノ粒子を合成できることを明らかにしている。この方法では、「水」を還元剤として金属塩の還元が進行しており、安息香酸を触媒とする光化学的還元反応によりナノ粒子合成が可能であることを見出している。メカニズムの解明を進めるとともに、水を還元剤とする新規ナノ粒子合成法としての確立を目指す。平成28年度に請求した研究費は、当初の予定どおり、実験試薬あるいは反応用光源に用いるキセノンランプの交換費用をはじめとする消耗品、ならびに成果発表のための旅費として用いる。
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