金属ナノ粒子のサイズを精密に制御することは極めて重要な課題である。本研究では、金・銀・銅をはじめとする金属ナノ粒子のサイズを「光」によって制御する新技術を開発する。金属ナノ粒子表面にスピロピラン誘導体を修飾し、ナノ粒子のプラズモン吸収波長に対応する光を照射する。粒子表面での光熱変換に基づくスピロピランの熱異性化によりナノ粒子を凝集させ、サイズを制御する新プロセスを開発する。さらに、異種のナノ粒子のプラズモン吸収波長に対応する光を照射し、モルフォロジーを制御したコアシェルおよび合金ナノ粒子を合成する新プロセスへ展開する。 平成28年度は、光照射により粒径の制御された金ナノ粒子を調製する新たな方法を開発した。クエン酸を含む水に塩化金酸を加えて室温下で紫外線を照射することにより、粒径の制御された金ナノ粒子を調製できることを見出した。本方法では、金ナノ粒子の熱的な二次凝集は起こらず、単分散な金ナノ粒子を調製できる。さらに、安息香酸を還元剤として用いる新たな金ナノ粒子合成法を開発した。この方法では、熱的な還元による金ナノ粒子の生成は一切進行しない。そのため、紫外線を照射した部分にだけ選択的に金ナノ粒子を生成させることが可能である。本方法では、単分散な金ナノ粒子を生成させることが可能であり、その粒径を安息香酸の添加量あるいは紫外線強度を変えることにより自在に変えることが可能であることを明らかにした。
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