研究課題/領域番号 |
15K14204
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬越 大 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20311772)
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研究分担者 |
吉本 誠 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (80322246)
岡本 行広 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50503918)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リポソーム / キラル / 膜ゆらぎ / 分離デバイス |
研究実績の概要 |
リポソーム膜に不斉認識能があることが報告されている.リポソーム膜表層の不斉炭素周辺におけるナノ秩序領域において,静電的相互作用,疎水性相互作用,水素結合が同時に誘導されて高いキラル選択性が誘導されることを明らかにしてきた.詳細な検討により, 膜ゆらぎが誘起される「(i)誘導過程」と特定分子を協奏的に吸着する「(ii)認識過程」が存在し,特に,前者がカギである事も明らかとしてきた.さらに,我々は,「誘電緩和現象」により膜ゆらぎを御する手法も確立している.そこで,本研究では,『リポソーム膜固定化マイクロ流路』を活用し,熱/電場等の『外部場』によって『膜ゆらぎ』を誘導する革新的な分離分析技術の創成を目的とする.本年度で得られた成果は以下の通りである.クロマトグラフィーへの応用を視野に入れ,従来のリポソームの欠点を補うことのできる重合性脂質からなるリポソームに着目した.そして,この重合性脂質からなるリポソームに対して,キラル認識創発のための膜場設計法の指針を得るとともに,リポソーム評価法の確立に成功した.また,この知見を活用し,リポソーム膜を用いたアミノ酸・医薬品のキラル分離に成功している.さらに,膜ゆらぎクロマトグラフィーの実現のために重要な要素の一つである温度や電場といった外部場を印加可能なデバイス作製に成功し,電場や温度印加による膜構造の制御ならびに膜と分離対象物質との相互作用の制御にも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた内容の成果は論文、総説、解説、国際会議、国内シンポジウムにて報告している。これらの成果から考えて、当初の計画以上に進展していると判断している
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今後の研究の推進方策 |
温度変化あるいは交流電場など,外部環境を変動させる事を可能とするマイクロ流路とリポソームを組み合わせた“膜ゆらぎ”クロマトグラフィーを達成する.のために,(i) 固定化リポソームの種類,(ii) 移動相流速,(iii) 外部場推進力差(温度差,電圧など), (iv) 周波数,(v) 最終収束温度など,膜ゆらぎを活用するために必要な従来にはない分離分析条件を設定し,それらの条件と得られた知見との関連性を明らかにする.上記の知見に基づいて,実際の分離・分析の可能性について検討する.例えば,標準物質として,アミノ酸,医薬品(ステロイド系ほか)やその中間体など,低分子量分子の光学異性体をケーススタディとして活用し,その光学分離挙動を解析する.
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