研究課題/領域番号 |
15K14207
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 工学研究院, 教授 (20201642)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分離膜 / プラズマ / layered hybrid / シリカ膜 / ゾル-ゲル |
研究実績の概要 |
無機膜は高分子膜をしのぐ選択性と透過性を示す一方,高コスト,低膜充填密度などの欠点を有する。典型的なシリカおよびシルセスキオキサン膜(SQ)はセラミック基材の上に薄膜製膜されているが,高分子多孔膜を基材とし,分離層としてシリカ層を有するlayered hybrid構造を提案する。layered hybrid膜とすることで,高選択性・高透過性だけでなく,低コスト,高い膜充填密度,軽量を併せ持つ,新規なフレキシブルセラミック膜が可能となる。そこで本研究では,(a)高分子基材へのゾルコーティングによるシリカ膜のlayered hybrid製膜技術の確立,および(b)常圧プラズマを利用した高速製膜技術の開発,を研究目的としている。 (a)に関しては,市販高分子ナノろ過膜(分画分子量1k,2k,3k)を支持体としてbistriethoxysilylethane(BTESE)をドロップコーティングし,150℃加熱処理することで製膜した。コーティングゾルの調製条件およびコーティング条件を検討することで,layered hybrid膜がNaCl脱塩の逆浸透特性を示すこと,さらに水/イソプロピルアルコール(IPA)の蒸気透過分離特性を示すことを明らかとした。さらに,コーティング層の薄膜化を目的として,高分子基材上にBTESEゾルをコーティング直後に,エタノールあるいは水で膜表面を洗浄し150℃熱処理する洗浄膜を製膜した。(b)に関して,セラミック中間層に,常圧プラズマCVD法によりヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を前駆体として,分離機能性を示すシリカ膜の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a)に関しては,2000ppmNaClに対して阻止率98%以上の逆浸透分離特性を示すlayered hybrid膜および蒸気透過特性の開発に成功している。コーティング後に酸性あるいはアルカリ処理することで,膜特性を制御できることを明らかとした。さらに,水/IPA分離において,洗浄BTESE膜は,洗浄を行うことで水透過率を高分子基材とほぼ同レベルのまま,分離係数のみが増加した高選択透過性膜の作製が可能であることを明らかとした。製膜条件を最適化することで,水/IPA分離係数が1000以上の示すことを明らかとしたから。 (b)に関しても予備実験的な段階ではあるが,既に分離特性(CO2/N2透過率比~30)を示す常圧プラズマCVD膜の製膜に成功した。しかしながら,製膜しながら気体透過率を測定するプラズマ製膜装置(in-situ気体透過機能付き)ではないため,製膜および透過特性評価に時間がかかるのが課題であり,装置作製および製膜条件の最適化のため期間延長を申請した。 以上より,“(2)おおむね順調に進展している”と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(a)高分子基材へのゾルコーティングによるシリカ膜のlayered hybrid製膜技術 2019年度も高分子基材の選定(材質:ポリスルホンPSf,ポリフッ化ビニリデンPVdFなど,各種細孔径(分画分子量)),高分子膜の前処理法(プラズマ表面処理など),コーティングゾル(コーティングゾルの親疎水性制御,分子量,溶媒種類など),コーティング法(スピンコート,ディップコート)を詳細検討して,layered hybrid製膜の最適化を図る。 (b)常圧プラズマを利用した高速製膜技術の開発 現有の常圧プラズマ蒸着ユニット(ダメージフリープラズマジェット(PF-DFMJ-02))を用い,流通型プラズマ製膜装置(in-situ気体透過率測定機能付き)を作製し,連続製膜の可能性を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,(a)高分子基材へのゾルコーティングによるシリカ膜のlayered hybrid製膜技術の確立,および(b)常圧プラズマを利用した高速製膜技術の開発を行っている。(a)に関しては,layered hybrid膜が逆浸透分離特性や蒸気透過特性を示すことを明らかとしており,ほぼ計画通りに研究が進行した。しかし,(b)に関しては,予備実験的な段階ではあるが,既に分離特性(CO2/N2透過率比~30)を示す常圧プラズマCVD膜の製膜に成功した。しかしながら,製膜しながら気体透過率を測定するプラズマ製膜装置(in-situ気体透過機能付き)に不具合が生じ,その結果製膜条件の検討が十分遂行できなかった。そこで新規装置作製および製膜条件の最適化のため期間延長を申請した。
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次年度使用額の使用計画 |
製膜しながら気体透過率を測定するプラズマ製膜装置(in-situ気体透過機能付き)を,特に漏れの無い様に装置を一部ガラス部品を用いてリークフリーで作製する。
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