平成28年度は,平成27年度の成果を基に,まずは膜乳化法を利用した水性二相液滴の小液滴化を検討した.ポリエチレングリコール(PEG)水溶液とデキストラン(DEX)水溶液を混合すると,低濃度域では均一相であるが,高濃度域でPEGリッチな相とDEXリッチな相に分離する.このため,低濃度のPEG-DEX混合水溶液を分散相としたWater-in-Oil(W/O)エマルションを膜乳化法を用いて調製し,さらに高濃度の低分子溶質を溶解した水溶液を分散相として膜乳化法により調製したW/Oエマルションを混合すると,2つのエマルションの分散相の浸透圧差に伴い,PEG-DEX混合水溶液からなるエマルションから低分子溶質を溶解した水溶液からなるエマルションへ水分子が移動する.これにより低濃度のPEG-DEX混合水溶液は高濃度化し,分散相内で二相に相分離した液滴となる.膜乳化法におけるエマルション径は,利用するShirasu Porous Glass(SPG)膜の細孔径で制御できるため,水性二相液滴の小液滴化のため細孔径の小さなSPG膜を用いて実験を行った.本研究では細孔径を1.1ミクロンまで小さくして検討し,細孔径に応じて得られる水性二相液滴の径を小さくすることができた. さらに水性二相液滴の粒子化の検討を行った.ジアクリレート基を有するPEGとDEXにおいても水性二相液滴が調製されることを確認後,PEGのみを架橋し粒子として回収することを目指し,水性二相液滴に対しUV架橋を施した.水性二相液滴から期待される粒子形状は半球であったが,真球に近い形状であった.これは架橋速度が想定ほど速くなかったため,半球状態を維持したままで粒子化できなかったためと考えられる. 今年度論文発表はできなかったが,上記点を解決後,論文発表を行う予定である.
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