研究実績の概要 |
本研究では超臨界法の適用による層数相関距離の制御された硫化モリブデン,MoS2,系カルコゲナイドナノシートの効率的合成手法の確立と、そのエネルギー応用を試みた。 最終年度においては、酸化モリブデンと単体硫黄・セレンを原料として、超臨界エタノール溶媒中で、水素化ホウ素ナトリウムによる還元、カルコゲン化することで硫化セレン化モリブデン,MoS2(1-x)Se2xを合成した。超臨界条件で得られたMoS2は、5層以下のナノシートが凝集し、エッジ露出構造を取っているフラワー状粒子となることが明らかとなった。溶媒密度の増加に伴いナノシートの層数が減少する傾向が確認されたことから、高密度超臨界溶媒がカルコゲナイドシート表面を安定化することで、薄膜化を促進することが示唆された。 この作製したMoS2(1-x)Se2xは、触媒活性を示すエッジが優先的に露出する構造を有することから、水の電気分解による水素製造における白金系触媒の代替として期待できる。そのため、作製されたMoS2の水素発生反応触媒としての特性を評価したところ、バルク体のMoS2と比較し、水素発生過電圧が激減しており、高い触媒活性を示した。また、MoS2(1-x)Se2x系で硫黄セレン比を制御することで触媒活性はさらに向上し、Seリッチ組成の固溶体において過電圧は最小値を示した。これは、固溶体化することで水素吸着自由エネルギーの値が水素発生触媒の最適値に近づいたためだと考えられる。 以上より、本研究を通じ、超臨界流体を用いた高触媒活性を有するMoS2(1-x)Se2xナノシートの高速ワンポット合成に成功し、そのエネルギー材料としての有望な特性を提示できた。
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