研究課題/領域番号 |
15K14216
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野田 優 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50312997)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 結晶シリコン薄膜 / 急速蒸着 / カーボンナノチューブ / 塗布 / 簡易製造 |
研究実績の概要 |
①大結晶Si 薄膜の1 分作製:石英ガラス基材上での作製技術の確立 石英ガラス(SiO2)上に厚さ0.1 μmのa-C層を密着層として形成することで、融点以上から融点以下へと温度を下降させながら1 minでSiを10 μmの厚さに急速蒸着することで、Siの膜はじきを抑え、面内粒径100 μm以上の大結晶シリコン膜を安定して合成できるようになった。しかし冷却時にSiがSiO2よりも収縮するため、引っ張り応力が生じクラックが形成することも分かった。そこで熱膨張係数の大きい多結晶アルミナとサファイアc面を基材に用い同様に製膜すると、クラックのない大結晶シリコン膜を得られた。圧縮応力のためSi膜が部分的に基材から剥がれ、この現象を制御することでSi膜の成長基材からプラスチック基材への転写を試みる計画でいる。 ②結晶Si へのCNT 塗布によるセル化:単結晶Si ウェハによるセル化技術の確立 n型単結晶Si基板上への市販単層CNTの分散・塗布による太陽電池作製を進めた。多様なCNTへの展開を考え、CNTを界面活性剤を用いて分散、ろ過、薄膜化し、Si基板上へ転写する方法を採用、微量に残存する界面活性剤の除去により発電効率が大きく向上することが分かった。さらにSi太陽電池の効率向上技術を適用、簡易な製法ながら約10%の発電効率を達成した。 ①の融液蒸着・その場結晶化という新提案での技術で大結晶Si膜の急速蒸着という挑戦的技術、および②のCNTの分散・塗布技術による結晶Siのセル化という実用技術を確立できたことは、大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案時に、平成27年度は成長基板上での大結晶Si薄膜の作製技術の確立と、単結晶Siウェハのセル化技術の開発を計画していたが、概要に報告した通り両方を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、①の大結晶Si膜をプラスチック基材上に転写し、②のセル化技術をプラスチック基材上Si膜に適用する。両者の組み合わせでセルを作製できれば、フレキシブル結晶Siというユニークな太陽電池の簡易・高速製造が実現する。非常に挑戦的な内容だが、1年間で基礎技術を確立し、プロジェクト後の産学協働による実用化へとつなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度の研究が順調に立ち上がったため12万円弱の差額が発生したが、H28年度の課題は特に挑戦的であり、種々の試行錯誤が予定されるためH28年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
転写用のプラスチック基材といった消耗品などに有効に活用する予定である。
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