研究課題/領域番号 |
15K14217
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
草壁 克己 崇城大学, 工学部, 教授 (30153274)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 結晶化 / 包接 / 新規多孔体 |
研究実績の概要 |
ガンマ-シクロデキストリン(ガンマ-CD)とアルカリ金属水酸化物で構成される金属有機構造体(CD-MOF)は、従来のMOFに比べて安全かつ低価格であり、生分解性を示す。また、ガンマ-CDの持つ包接作用を受け継ぐと共に、BET比表面積で900 m2/g以上を示す新規多孔性結晶体なので吸着作用が期待できる。また、CD-MOFは2種類の薬剤を同時に取り込むことができるので新規DDS材料として期待できる。平成27年度はアルカリ金属水酸化物としてKOHを用いてメタノールの蒸気拡散法によりCD-MOFの結晶化に成功した。また、CD-MOF結晶化に及ぼすpHの影響を明らかにしたところpH12.6以上の高塩基性条件でのみ結晶化が進行することを明らかにした。次にCD-MOFの原料溶液に抗腫瘍活性を持つフェルラ酸を加えて、同様の蒸気拡散法を用いることでフェルラ酸を包接しながら結晶化を行うことに成功した。CD-MOF を構成するガンマ-CD内へのフェルラ酸の包接については示差熱分析により確認した。フェルラ酸は蛍光性を示す物質であるために、フェルラ酸の包接濃度を変えたCD-MOFを合成し、その蛍光強度を測定した結果、濃度消光のために、フェルラ酸濃度が高くなるほど蛍光強度が減少することがわかった。また、CD-MOFのミクロ孔よりも大きな分子として、ローダミンBを用いた場合も同時包接結晶化が起こることを確認した。さらに平成28年度に実施予定であったKOH以外の錯形成結晶化について調査したところ、KClやHCOOKを用いた場合にCD-MOFを合成することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に予定していたCD-MOFの結晶化およびフェルラ酸を用いた包接結晶化手法の確立について研究が終了し、KOH以外の錯形成剤としてKClやHCOOKが利用できることを明らかにした。また、フェルラ酸以外にローダミンB、フルオレセン、C60フラーレン、ポルフィリンなどの比較的大きな分子の包接結晶化も可能であることを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
CD-MOFへ、フェルラ酸と同じ種々の芳香族カルボン酸の吸着特性について明らかにすることで、包接結晶化と吸着とを組み合わせた複合材料化の検討を行う。 計画外の成果として、CD-MOF内へのフルオレセンあるいはローダミンBの包接結晶化が可能であることを明らかにしたので、今後はフルオレセンとローダミンBを同時に含む原料溶液からの包接結晶化を行い、両色素分子を含むCD-MOFの蛍光特性を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定した実験を延期して、平成28年度に行うため、次年度に繰り越した
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施する実験で使用する消耗物品の購入に充てる。
|