多孔質結晶であるシクロデキストリン系金属有機構造体(CD-MOF)を有機吸着剤あるいはドラッグデリバリーのキャリアとして利用することを目的として、平成28年度はCD-MOFへの芳香族カルボン酸の吸着挙動について研究を進めた。CD-MOFは水溶性なので、本研究ではメタノール溶液中での吸着挙動を明らかにした。同時に研究を進め、CD-MOFにポリマーを架橋することで、水に不溶となることを確認した。CD-MOFへの吸着量は芳香族カルボン酸の解離定数に大きく影響するが、置換基の立体障害などの因子についても影響した。CD-MOFの吸着材としての性能を評価するために、代表的な吸着材である活性炭、活性白土、X型ゼオライトへのフェルラ酸の吸着挙動を比較したところ、CD-MOFは初期の吸着速度が遅いが、飽和に達するまでの時間が長く、飽和吸着量は他の吸着材の中で最大であった。次にCD-MOFへの安息香酸の飽和吸着量について検討したところ、CD-MOF内の6個のガンマシクロデキストリンで構成される基本ユニット当たり4.4個の安息香酸が存在することを明らかにした。また、CD-MOFは親水性ナノ孔と疎水正ナノ孔が交互に並んだ構造をとっているが、安息香酸の吸着等温線の結果から、単独の飽和挙動を示したことから、安息香酸は基本ユニットの中心に位置する親水性ナノ孔に存在すると推定される。 これらの結果から、吸着法あるいは平成27年度に開発した同時包接結晶化法を用いることで、種々の薬剤をCD-MOFに取り込むことが可能となった。
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