研究課題
平成28年度の研究において、水酸化コバルトで修飾したルチル型TiO2が波長850 nmまでの光に応答して、水を触媒的に酸化できる光触媒であることを見出した。波長850 nmまでの光に応答する酸素生成粉末光触媒は、我々の知る限り初めての例である。本系では、担持コバルト種からTiO2の伝導帯への電子遷移によって反応が進行していると考えられ、担持コバルト種は酸素生成活性点だけでなく、光吸収部位として機能するという特徴を有する。本年度は、含浸法で調製したCoOx/rutile TiO2を光触媒として用いて、担持コバルト種の構造と酸素生成活性の相関を明らかにすることを試みた。調製した光触媒の構造は粉末エックス線回折、紫外可視拡散反射分光、エックス線光電子分光、エックス線吸収分光、および電子顕微鏡により解析し、活性向上には次の2つが重要であると結論付けた。1.Co3O4をTiO2担体上へできるだけ多く、高分散に担持することで、光吸収能を向上させつつ、酸素生成活性点を高分散化させること。2.Co3O4をTiO2表面と反応させることなく、Co3O4のまま担持し、光吸収部位および酸素生成活性点として機能させること。上記のように、本系は担持されたコバルト種から酸化チタンへの伝導帯への電子励起によって反応が進行すると考えられる。そのため、伝導帯の位置やその他の物理化学的特性の異なる半導体を適用することで、光触媒活性も変化すると予想される。そこで種々のチタン酸塩ATiO3 (A = Ca, Sr, Ba)を用いて、水の可視光酸化反応における光触媒活性の比較を行った。その結果、光触媒活性はAサイトカチオンに大きく依存すること、また同じ組成のチタン酸塩を用いた場合でも、担持されるコバルト種の分散性が大きく変化し、結果として異なる光触媒活性を与えることを見出した。
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ACS Appl. Mater. Interfaces
巻: 9 ページ: 6114-6122
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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