研究課題/領域番号 |
15K14221
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
窪田 好浩 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30283279)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゼオライト触媒 / チタノシリケート / 部分酸化 / フェノール / 芳香環 / ベンジル位 |
研究実績の概要 |
従来型触媒であるTS-1を合成し,ベンゼン酸化反応の反応条件と反応操作について検討し,ベンゼンの酸化に適した条件を見出した。また,フェノールの酸化とベンゼンの酸化の中間的な検討として,アルキルベンゼン類であるトルエンの酸化を検討した。この場合,芳香環の酸化の他に,ベンジル位酸化が起こり得る。芳香環の酸化はイオン的な反応であり,ベンジル位酸化は,ラジカル的な反応である。シクロヘキセンの酸化に対して,一般に,エポキシ化反応とアリル位酸化が競合するが,Ti-MCM-68触媒ではエポキシ化が優先し,Ti-MCM-41触媒ではアリル位酸化が優先する。Ti-beta触媒の場合,エポキシ化が優先するものの,アリル位酸化反応もかなり起こる。これらの触媒をそれぞれ,トルエンの酸化に用いたところ,上記でエポキシ化が優先する触媒は,芳香環の酸化の選択性が高く,アリル位酸化が優先する触媒は,ベンジル位酸化の選択性が高かった。想定外の結果として,過酸化水素を酸化剤とする反応でも,ヒドロペルオキシ化が起こることが見いだされた。この時の酸素源は,気相の酸素であることもわかった。アリル位酸化を促進する性質の強い触媒が,ヒドロペルオキシ化を促進することも明らかとなった。 上記の,シクロヘキセンの過酸化水素酸化の部分だけをまとめると,次のとおりである。Ti-MCM-41とTS-1はアリル位酸化を,[Ti]-MCM-68calとTi-betaはエポキシ化をより進行させた。前者の二つは過酸化水素の自己分解を促進することから,過酸化水素を分解しやすい触媒はアリル位酸化を進行させやすい傾向が見られた。18O標識を利用した検討により,ヒドロペルオキシ化には気相O2が関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ti-YNU-2触媒の調製,YNU-2の骨格内での欠陥部位の位置と量を制御するための,前駆体YNU-2Pのスチーミング条件の検討,残留有機物の定性・定量分析,酸処理時の「酸濃度」「酸処理温度」「酸処理時間」の検討など,YNU-2のTiCl4の処理時の「処理温度」「処理時間」「TiCl4流量」の検討およびスケールアップの検討など,Ti-YNU-2の焼成処理時の「焼成温度」「焼成時間」「ガス雰囲気(特に水分量)」の検討など,のかなりの部分を検討した。そのため,計画に沿う意味では「おおむね順調」と言える。しかし,技術移転を想定した場合,より簡便な触媒調製法が求められるため,調製法に関しては,計画以上のことを検討している。一方で,反応の核心まで至っていない点で,やや遅れている。とは言え,当初計画にない意外な成果も得られているので,総合的には「おおむね順調」を選んだ。
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今後の研究の推進方策 |
従来型触媒であるTS-1を合成し,ベンゼン酸化反応の反応条件と反応操作の最適化を図ってきたが,さらにこれを推し進める。また,Ti-YNU-2やTi-MCM-68を用いて,アルキルベンゼン類の一種であるトルエンの部分酸化についても,さらに検討を続ける。トルエンはフェノールよりもベンゼンに近い性質を持っているので,ベンゼン酸化の高効率化の手がかりがつかめてきている。また,ア芳香環の酸化以外に,ベンジル位の酸化が実際見られるので,芳香環とベンジル位のどちらを促進するかで触媒を分類し,活性点の違いが明らかになりつつある。この検討をさらに続ける。
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備考 |
論文や学会発表リストの確認用
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