球状のシリカナノ粒子の集合体を利用してできるメソ多孔体の内部に、その細孔よりも大きな触媒ナノ粒子であっても内包できる簡便なコア-シェル触媒調製法を確立し、タンデム触媒などの高機能固体触媒の開発への応用を目指した研究を行ってきた。昨年度までに、シリカナノ粒子の集合体を触媒担体に用いてミクロンサイズの酸化銅粒子を内包した複合化触媒を調製し、アンモニアボラン加水分解による水素発生反応への応用を検討した。その結果、シリカアルミナナノ粒子と酸化銅粒子の比率がその耐久性に大きな影響を及ぼすことがわかった。この複合化触媒は、複合化せずに酸化銅粒子のみを用いた場合に比べると繰り返し耐久性が約3倍に向上した。また、シリカナノ粒子の表面に三価のアルミニウムイオンを添加してカチオン交換サイトを生成させることで、カチオン性の有機光触媒を固定化することにも成功した。この有機光触媒は、シリカアルミナナノ粒子の表面をほぼ単層で完全に覆うことができた。その結果、シリカアルミナナノ粒子複合体の内部にできた間隙内で水素発生触媒として機能する白金ナノ粒子と複合化させた際には、全ての白金ナノ粒子が複数の有機光触媒に取り囲まれる構造となる。この構造は丁度、天然の光合成系において光捕集のために複数のポルフィリン分子が配されているのと同様の構造である。この複合化触媒を用いて光触媒水素発生反応を行ったところ、通常のメソ多孔性シリカアルミナを用いた場合に比べて効率のよい水素発生が確認できた。本年度は、さらに、水の酸化反応に高い活性を示すことが知られているシアノ架橋金属錯体をシリカナノ粒子の多孔質集合体に内包させ、その光触媒的水の酸化反応に対する活性を評価した。
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