研究課題
環境にやさしい持続可能な社会の実現のために、再生可能バイオマス資源の利活用は極めて重要である。日本近海には、陸上植物と比べて成長速度およびCO2吸収効率が高い海藻が多く存在する。海洋性大型藻類である海藻は、糖類含有率が高い、リグニンを含まない、大きさが木質や微細藻類と比べて扱いやすい、収穫サイクルが短い、主食でない、淡水利用と競合しないなどの多くの利点を有しており、海藻は次世代バイオマス資源の1つとして有望視されている。本研究期間では、トップクラスの成長速度を有するミナミアオノリを主な対象海藻とする。その構成成分は,ウルバンと呼ばれる多糖が藻体乾燥重量あたり25-40%を占め、他にデンプン, セルロースが5-15%ずつなどである。ウルバンは、中性糖(ラムノース等)と酸性糖(グルクロン酸等)からなる糖鎖骨格の一部が硫酸エステル化したヘテロ多糖である。これらヘテロ多糖に有効に働く分解酵素や化学法による選択的な加水分解に関する報告はほとんどない。そこで本研究において、温和な水熱反応技術や固体触媒技術を基軸とし、研究用グレードの海藻を原料として、無駄なく有用な化合物に変換するための、触媒プロセスの開発を行う。水中で酸性を示す様々な固体酸触媒を用いて,ウルバンの触媒水熱反応を行った。無触媒では,反応温度180℃でもほとんど反応が起こらなかった。また、ゼオライト、シリカアルミナも加水分解活性は低かった。一方、強酸性のスルホン酸基を有する触媒を用いた時は、反応温度120℃からウルバンの加水分解が進行した。生成物選択性は、ラムノースが多く、160℃でだいたい全てのウルバンが分解し、ほぼ化学量論量のラムノースが得られた。反応前後の触媒を元素分析したところ、Amberlyst70 は、反応後にもS(スルホ基)濃度がほとんど減少せず、また、繰り返し実験においても触媒活性を維持した。
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ChemCatChem
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RSC Advances
巻: 7 ページ: 12346-12350
10.1039/C6RA28778F