研究課題
医薬など生理活性物質の開発において、含フッ素化合物への関心が高まっている。これに伴い、簡便に有機化合物のC-H結合を直接活性化しフッ素を導入する合成手段の開発が求められている。本研究では、天然に存在し、ハロゲン配位鉄オキソ種を活性種として温和な条件でアルカンをハロゲン化する単核非ヘム鉄酵素SyrB2の触媒反応機構に学び、医薬品等に含まれるC-H結合をワンステップ反応でC-F結合に変換するフッ素化触媒を開発する。具体的には、シスの関係にFe-F結合とFe=O結合の双方を有する錯種cis-F-Fe=Oを活性種として発生する錯体触媒を合成し、鉄オキソ種によるC-H結合の活性化を鍵とする触媒的なC-F結合生成の化学を確立するとともに、含フッ素医薬品および18F-PET造影剤の合成に資する実用触媒を世に提供することを目指した。ハロゲン化酵素SyrB2によるハロゲン化反応の鍵反応である①鉄オキソ種によるC-H結合からの水素原子の引き抜き反応と②Fe-X(ハロゲン)結合のラジカル開裂を伴うC-X結合反応のうち、反応①を高選択的に行う一群の単核鉄錯体を開発している。特に、シスの関係にある2つの配位交換可能な配位座とFe(dpaq)錯体の特徴であるカルボキサミドアニオン配位とを共に有するFe(propaq)錯体は、オリジナルのFe(dpaq)よりも高い選択性を示すことを明らかとしている.シスの関係にある2つの配位交換可能な配位座を有するFe(propaq)錯体,Fe(tpa)錯体,および,対応するマンガン錯体,さらにマンガンサレン錯体を用いて,種々の条件下,アルカンのフッ素化反応を網羅的に評価した結果,Fe(propaq)錯体を触媒とした場合に収率は低いながらもフッ素化反応が進行することを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
Fe(propaq)錯体を触媒とした場合に収率は低いながらもフッ素化反応が進行することを見いだしている.
シスの関係にある2つの配位交換可能な配位座を有する錯体がフッ素化反応に有効であることを見いだした.さらに錯体触媒と反応条件の最適化を進める.
当初計画していたよりも早くフッ素化反応を触媒する錯体を見いだすことが出来たため.
触媒構造の最適化と触媒条件の最適化を促進するための精製装置と反応解析装置を導入し、年度内に当初の目的を達成する計画である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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