本年度は,磁気走査による細胞パターニングを実証した.従来の細胞パターニング技術は,基本的に,予めパターニングを決めておく必要があり,その変更は困難であった.そこで,任意形状かつパターニングが変更可能な細胞パターニング手法として,磁気アルキメデス効果に基づくラベルフリー細胞操作を利用した磁石走査法を提案した.本手法では,培地に常磁性化合物を添加し,細胞を相対的に反磁性体化することで,細胞に磁場に反発する性質を付与する.この状態で細胞懸濁液を含むチャンバーの下部で磁石を走査すると,磁場に反発する細胞は磁石が通った領域から除去されることになり,細胞がパターニングされる.実験開始直後にチャンバー全体に分散していた細胞は時間の経過に伴い重力によって底面上へ沈降していくが,磁石の走査経路上の細胞は,磁場により斥力を受け,走査経路上からその内側および外側に移動し,パターニングできることを確認した.また,従来手法では必須であった細胞接着分子のパターニングを必要としないため,細胞上での細胞パターニングも可能である.同様の実験を,コンフルエントにまで培養した細胞シート上で行い,共焦点顕微鏡で観察した.その結果,細胞上に細胞がパターニングされていることが確認できた.以上のように,本研究全体を通して,磁気アルキメデス効果に基づくラベルフリー細胞操作を応用し,パターニング,微小組織構築および微小組織の操作を実証し,本手法の有用性を検証することに成功した.
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