前年度は,CBM30とCBM3の2つのタイプの糖結合モジュール(CBM)に関して,大腸菌の細胞外膜タンパク質OmpWとの融合タンパク質を設計し,大腸菌OMVs表面への局在を試みた.結果としては,融合タンパク質のOMVs表面への発現には成功したことをウエスタンブロット解析により確認した.しかし,FITC等の蛍光物質で標識したカルボキシメチルセルロースなどの糖鎖高分子と結合を評価したところ,CBMの有無により有意な吸着量の差を確認することができなかった. そこで,最終年度は引き続きCBMに関して,OMVs表面での機能を保持した状態での発現を試みた.ウエスタンブロット解析の結果からOMVs上でOmpW-CBMの融合タンパク質が発現していることは確認されているため,機能を有した状態で発現していない,ないしは発現の局在がOMVs表面でなく多糖を吸着できない可能性が考えられた.そこで,CBMのコドンを大腸菌用に最適化する,OmpWを必要と考えられる部分のみを残して短縮させるなど様々な検討を行ったが,最終的に多糖をOMVs上に有意に吸着させたという結果を得ることができなかった.その他の検討として,これまでに他の研究グループによって大腸菌OMVs上に効率的にタンパク質を提示できると報告があったClyAとCBM30の融合タンパク質も発現させたが,同様にウエスタンブロットでの発現確認はできたものの,多糖をOMVs上に有意に吸着させることができなかった.これらの結果から,CBM30の構造的特性などから大腸菌OMVs上への発現が困難であったと推測される.
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