• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

細胞を殺さずに細胞内分子を抜き取る

研究課題

研究課題/領域番号 15K14235
研究機関大阪大学

研究代表者

岡本 行広  大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50503918)

研究分担者 馬越 大  大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20311772)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード脂質膜場 / DNA / RNA / 抽出 / 膜タンパク質 / 電気泳動
研究実績の概要

細胞内の特定分子を認識し,“細胞内の特定分子を任意の時間で抽出可能とする”前処理プロセス法の構築を目指す.これにより,単一細胞解析の前処理プロセスを簡便化するとともに,現状では実施不可能な同一細胞に対する継時的な細胞内発現分子解析を可能とする唯一の前処理プロセス法を確立する.本年度は,光学異性体の認識ならびに抽出(吸着)に関して研究を行った.光学異性体は物理的な特性は同じであるが,生体内での役割・効果は異なるため、光学異性体を認識し,抽出するプロセスの研究は細胞解析において重要である.このような研究背景のもと,細胞膜に類似の脂質ナノ薄膜によるアミノ酸などのキラル分離法の研究を実施した.
ところで、細胞はラフトと呼ばれるナノドメインを形成し,このラフトは高度な認識場であると報告されている.そこで,この高度な光学異性体認識能を模倣するため、ナノドメインを形成するリポソームを作製し,光学認識能の評価を実施した.その結果,ナノドメインを形成する脂質ナノ薄膜では,ドメイン構成脂質の割合によりキラル認識能の創発が可能であり、またキラル認識能の制御が可能であった。また、キラル認識においてはドメイン境界界面ならびに秩序性の高いドメインが重要であることを見出した。これらの知見より、細胞は膜タンパク質・脂質分子集合体・ナノドメインのどれかもしくはこれらの協調によりキラル認識していると予測される。ところで、脂質ナノ薄膜は優れた機能を有しているが、その反面、脆弱であるという欠点を有している。そこで、重合性脂質に着目し、このリポソームの欠点を補完し、キラル認識能の創発・制御を容易に可能な手法の確立に成功した。さらに、吸着した成分を回収する技術として、脂質薄膜を固定化した浮上性粒子を作製し、脂質薄膜と相互作用する物質の簡便な抽出・回収法の確立を達成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初計画以上の成果を得ることが可能であった。特に、細胞膜のキラル認識能の解明につながる成果そして、応用を見据えたキラル分離法の確立に至ったのは計画以上である。その結果3報の国際英文紙に掲載が決まるとともに、解説文1報、依頼講演2件を行うにいたった。

今後の研究の推進方策

抽出原理としては昨年度までに確立したために、さらに抽出性能の向上を検討する。また、現状では、細胞からの抽出を行っていないために、実際に細胞からの抽出を試みる。そして、得られた結果により、確立した抽出法の細胞への適用の可能性を評価するとともに、細胞へ適用した際の問題点を明確化する。そして、この問題点の解決を試み、当初の目的を達成する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Induction of chiral recognition with lipid nano-domains produced by polymerization2017

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro Okamoto, Yusuke Kishi, Keishi Suga and Hiroshi Umakoshi
    • 雑誌名

      Biomacromol

      巻: 18 (4) ページ: 1180-1188

    • DOI

      10.1021/acs.biomac.6b01859

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Development of easy, harmless and energy-saving water cleanup method by self-flotation of hollow glass beads coated with fatty acids2016

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro Okamoto, Yu Mine, Daiki Wada and Hiroshi Umakoshi:
    • 雑誌名

      Chem. Lett

      巻: 45 ページ: 544-546

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1246/cl.160112

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Chiral Selective Adsorption of Ibuprofen on a Liposome Membrane2016

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro Okamoto, Yusuke Kishi, Takaaki Ishigami, Keishi Suga, and Hiroshi Umakoshi
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. B

      巻: 120 (10) ページ: 2790-2795

    • DOI

      10.1021/acs.jpcb.6b00840

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 分子分析科学のためのリピドナノテクノロジーの創成2016

    • 著者名/発表者名
      岡本行広
    • 学会等名
      第36回キャピラリー電気泳動シンポジウム (SCE2016)
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県・徳島市)
    • 年月日
      2016-11-09 – 2016-11-11
    • 招待講演
  • [学会発表] 分子分析科学のためのリピドナノテクノロジー2016

    • 著者名/発表者名
      岡本行広
    • 学会等名
      日本分析化学会第65年会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道・札幌市)
    • 年月日
      2016-09-14 – 2016-09-16
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of water cleanup method by self-flotation of fatty acid coated hollow glass beads2016

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro Okamoto, Yu Mine, Daiki Wada, Keishi Suga and Hiroshi Umakoshi
    • 学会等名
      The 10th Conference of Aseanian Membrane Society (AMS10)
    • 発表場所
      奈良春日野国際フォーラム甍-IRAKA(奈良県・奈良市)
    • 年月日
      2016-07-27 – 2016-07-29
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of in situ cell surface modification for surface enhanced Raman analysis of cell membrane2016

    • 著者名/発表者名
      Takumi Ikeda, Yukihiro Okamoto, Keishi Suga and Hiroshi Umakoshi
    • 学会等名
      The 10th Conference of Aseanian Membrane Society (AMS10)
    • 発表場所
      奈良春日野国際フォーラム甍-IRAKA(奈良県・奈良市)
    • 年月日
      2016-07-27 – 2016-07-29
  • [学会発表] Chiral selective adsorption of amino acids and drugs on liposome membranes2016

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Kishi, Takaaki Ishigami, Keishi Suga, Yukihiro Okamoto and Hiroshi Umakoshi
    • 学会等名
      The 10th Conference of Aseanian Membrane Society (AMS10)
    • 発表場所
      奈良春日野国際フォーラム甍-IRAKA(奈良県・奈良市)
    • 年月日
      2016-07-27 – 2016-07-29
    • 国際学会
  • [学会発表] Electrophoretic separation method for membrane pore forming proteins in multilayer lipid membranes2016

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro Okamoto, Yusuke Tsujimoto, Keishi Suga and Hiroshi Umakoshi
    • 学会等名
      The 10th Conference of Aseanian Membrane Society (AMS10)
    • 発表場所
      奈良春日野国際フォーラム甍-IRAKA(奈良県・奈良市)
    • 年月日
      2016-07-27 – 2016-07-29
    • 国際学会
  • [図書] 日本生物工学会誌2017

    • 著者名/発表者名
      岡本行広
    • 総ページ数
      1
    • 出版者
      日本生物工学会

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi