研究課題/領域番号 |
15K14237
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
飛松 孝正 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30188768)
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研究分担者 |
森 光一 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50379715)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多面体オルガネラ / pduオルガネラ / ジオールデヒドラターゼ / プロパンジオール資化 |
研究実績の概要 |
原核生物の中にはカプシド様のナノサイズのタンパク性多面体オルガネラをもつものがいる。このオルガネラには特定の代謝酵素群が詰込まれ、代謝中間体の希釈を防いで、効率よく代謝を進めている。このオルガネラをバイオリアクターに用いるには、オルガネラの形成機構を知ることが必要である。本研究は、まずオルガネラ蛋白質間の相互作用部位を明らかし、更にその結果を応用して他の酵素群を詰め込むことで、バイオ・ナノ反応器への道を拓くことを目的として進めている。 本年度は、まずpduオルガネラの殻タンパク質の発現系の構築を行った。pduオルガネラの殻タンパク質をコードするpduA、pduB, pduJ, pduK, pduM, pduN, pduT, pduU の8つの遺伝子をpET21bベクターのT7プロモーターの下流に連結して組み込むことで、発現ベクターを作成した。そのベクターを大腸菌に組み込み大量発現させたところ、PduAやPduBに相当するタンパク質が遠心後の沈殿画分に得られた。現在、殻の多面体オルガネラの精製法を検討している。 次にオルガネラ酵素間の相互作用も検討した。まず、自己集合能をもつジオールデヒドラターゼ(DD)がpduオルガネラ酵素のオルガネラへの組込みの中心的役割を担っていると考えられるので、その自己集合を担っているβとγサブユニットのN末端領域の相互作用をプルダウンアッセイなどを用いて解析した。その結果、βサブユニットとγサブユニットのN末端領域が同種間だけでなく、異種間でも相互作用することを明らかにした。更に、このDDがオルガネラ酵素であるDD再活性化因子やPduOアデノシル基転移酵素と協同してシステムとして働き、酵素反応中に不活性化反応を受けた補酵素B12の再生を担うことを明らかにし、論文として報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
pduオルガネラの殻タンパク質の発現系の構築は順調に進んでいる。pduオルガネラの主要殻タンパク質であるPduAとPduB及びpduB遺伝子の翻訳開始部位が異なるPduB’の発現量比の問題もpduB遺伝子の上流部分に親菌のゲノム配列を用いることで解決した。発現させたpduオルガネラの精製も他種菌の例にならって簡単にできると考えていたが、思うようにできていない。この点がやや遅れていると考えている理由である。オルガネラ組込シグナルを付加した酵素類の発現ベクターの構築も進んでおり、オルガネラの精製法が可能となれば、組込みの確認等をすぐにでもできる状態になっている。
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今後の研究の推進方策 |
pduオルガネラへの酵素タンパク質の組込みを確認するためにもオルガネラの精製方法を確立したい。精製法が確立できれば、オルガネラ移行シグナルを付加した標的の組込み酵素を共発現させて、組込みの効率等を明らかにする。 これとは別の組込み確認法として、蛍光標識して顕微鏡下での確認をかんがえている。そのために、GFPなどの緑色や赤色蛍光タンパク質とオルガネラ殻タンパク質や組み込まれる酵素タンパク質の融合タンパク質の発現系を構築する。そして、蛍光ラベルした殻タンパク質と組込む酵素とを共発現させて、蛍光顕微鏡下で蛍光ラベルの存在場所が一致するかどうかで、組込みの確認を行う。 次に、DDのβサブユニットとγサブユニットのN末端領域の相互作用を用いれば、複数種類の酵素をオルガネラに組み込むことができるのかも試したい。 更に、pduオルガネラ酵素間の相互作用部位を明らかにすることで、組込みに使用できるシグナル配列の種類を増やしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)の149,294円を残した理由は次の理由である。 年度末や次年度開始時の実験実施に際して、他の試薬や器具の購入が必要になる可能性があったので、その場合に備えたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
研究遂行のために必要な試薬や器具の購入に用いる予定である。
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