原核生物がもつ100nm程度のカプシド様のタンパク性多面体オルガネラには特定の代謝酵素群が詰込まれ、代謝中間体の希釈を防いで、効率よく代謝反応を進めている。このオルガネラを新たなバイオリアクターとして用いるためにはオルガネラの形成機構を知ることが必要である。本研究では、オルガネラ内在酵素間の相互作用部位を明らかし、更にその結果を応用して他の酵素群をオルガネラに詰め込み、バイオ・ナノ反応器への道を拓くことを目的として進めている。 昨年度までの、クレブシラやサルモネラのpduオルガネラの殻タンパク質遺伝子(pduABJKMNTU)の発現実験ではオルガネラの殻形成の確認ができなかった。そこで、実験のポジティブコントロールとしてで、サルモネラのpduオペロン遺伝子のPCRクローニングと大腸菌での発現系の作成を進めた。ただ、増幅するpduオペロンが約18 Kbと長く、増幅条件の検討や変異の除去に手間取り、やっと変異のない発現系の構築ができたところである。 この殻形成実験に並行して、オルガネラ酵素間の相互作用領域の研究も進めた。オルガネラの主要酵素で集合能をもつジオールデヒドラターゼが他のオルガネラ酵素と相互作用するかをプルダウンアッセイをもちいて検討し、PduPやPduLに加えてPduOやPduQもDDと直接相互作用していることを見出した。更に、ジオールデヒドラターゼβおよびγサブユニットのN末端領域がPduOやPduLとの相互作用を担うことも明らかにした。また、PduPのN末端20アミノ酸領域がジオールデヒドラターゼとの相互作用領域であることも明らかにした。 明らかにしたこれらの相互作用領域を用いれば、pduオルガネラへに複数の異種タンパク質を組み込んでナノリアクターとして応用できると期待される。
|