研究課題/領域番号 |
15K14244
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 秀昭 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30170343)
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研究分担者 |
早川 晃弘 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (90709156)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロケット燃焼 / 高圧燃焼 / 高エネルギー励起 / レーザー計測 / OH-PLIF |
研究実績の概要 |
本研究は,従来困難であった高圧ロケット燃焼の火炎構造計測に適用できるOH ラジカルに対するレーザー誘起蛍光(OH-LIF)特性解明と計測技術開発を行い,極限環境燃焼の分光計測という学術分野の発展とロケット要素技術開発に資することを目的とする. 平成27年度は,大気圧下および東北大学流体科学研究所の高圧燃焼試験装置内に形成させた,酸素・水素噴流拡散火炎に対して,OH(2,0)およびOH(3,0)高エネルギーバンド励起によるOH-LIF 計測を実施し,はじめに分光器により蛍光スペクトルを計測した.その結果,OH(2,0)バンド励起による蛍光は290 nm付近,320 nm付近にピークを有する蛍光が卓越しており,前者はOH自発光である310 nm付近のバンドスペクトルとオーバーラップせず,高圧下のレーザー誘起蛍光として利用可能であることが確認できた.更に,2.0 MPaまでの高圧燃焼試験とOH-PLIFシングルショット瞬時画像取得に成功し,OH(2,0)励起であれば噴流火炎基部の瞬時火炎構造を可視化することが可能であることが示された.OH(3,0)バンド励起も可能であったが,蛍光強度が低いため実用性では難点があることがわかった. JAXA角田ロケット研究センターに準備中の6.0 MPa試験が可能な高圧燃焼試験装置も順調にセッティリングが進んでおり,問題であった窓部の水滴付着も解決しつつある.更に,OH*化学種を含む詳細反応モデルにより高圧噴流拡散火炎の数値解析を開始し,蛍光源であるOHラジカル濃度の数値予測も行った.今後実験と比較し,実験の妥当性を検証していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OH(2,0)およびOH(3,0)高エネルギーバンド励起による高圧下での蛍光スペクトルが計測できたこと,OH(2,0)バンド励起による2.0 MPaにおけるOH-PLIFのシングルショット画像が計測できたこと,数値解析によって自発光源であるOH*濃度の圧力依存性と噴流火炎構造が予測できたことは当初計画を超える成果である.これらは,次年度における蛍光強度増強ならびに温度依存性を含むOH濃度の定量計測に向けた準備としても有効である.更に高圧条件の6.0 MPa実験に向けた準備もJAXA角田ロケット研究センターと共同で進行しており,初年度としては十分な達成度と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,6.0 MPaの試験実施に向けた装置整備,PLIF強度を増強させる光学フィルターの更なる改良,OH濃度定量計測を実現しうる高圧化で使用可能なフラットフレームバーナの製作と試験を実施する方針である.6.0 MPa試験はJAXA角田ロケット研究センターで行うため,担当院生を現地に派遣する共に,東北大学で改良を行った光学系を現地に設置する.フラットフレームバーナの設計も進んでいるので,これを製作し,まず東北大学の高圧燃焼試験装置でテストを行い,JAXA角田ロケット研究センターに移動してより高圧下での試験を行う.燃焼試験条件は流速がパラメータであって特にロケット燃焼器の火炎基部を重要な研究対象としているので,流速を増大させ吹き飛びが発生する限界流速まで噴流速を高め,限界付近でのOH-PLIFが計測できるようにする. 数値解析でも流れの解析とOH濃度の定量値を求め,フラットフレームバーナの試験結果を利用した定量計測に発展させるともに,励起線のブロードニング効果,クエンチング効果も考慮した蛍光強度予測も加味し,本研究による計測手法を実際のロケット燃焼計測で実証する際の予測される有効性,留意点を明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が数千円のため、繰り越した方が次年度有効に利用できるため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成28年度請求とあわせ、平成28年度の研究遂行に使用する予定である
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