大型宇宙構造物において、安定した熱管理を実現するためには、構造物内部で生じた熱をうまく回収するとともに、回収した熱を外界(宇宙空間)に放出することで、熱バランスを保つことが不可欠である。将来的に、超大型宇宙構造物を実現するにあたっては、更なる排熱量の増加が要求されると見込まれる。このとき、従来のラジエーターを大型化するのみでは、放熱面積増大に伴う重量超過や、軌道上での展開の難しさなど、解決困難な課題に直面することが多分に想定される。そこで本研究では、磁場に応答して流動する磁性流体に吸熱させた上で、それを宇宙空間に吐出・分裂させ、有効放熱面積を格段に増加させることによって、効率的に排熱を行うことを着想している。その後、冷えた磁性流体液滴を、磁力線に沿って回収し、再利用する。 こうした新しいシステム実現の第一歩として、本研究は、磁性流体噴霧の基礎的知見の蓄積と、システム成立に当たっての課題の明確化を目的としている。 初年度に行った基礎試験では、磁場に応じて噴霧挙動が変化することを確認した。本年度は、その成果を踏まえて、製作したノズルから磁性流体噴霧を噴射し、システムの有効性を検討することを試みた。実験の結果、特に問題になったが、ノズルの目詰まり(コンタミ)であり、将来的に、磁性流体粒子の更なる微細化が課題であることが明確になった。また、システムのスケールファクタについては、未解明であり、実用化に向けた課題であることが認識された。
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