研究課題/領域番号 |
15K14251
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
酒井 武治 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90323047)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アブレーション / 空力加熱 / 炭素多孔質材 / 高温 / 輻射伝熱 |
研究実績の概要 |
高解像エックス線CT装置で炭素断熱基材(以下、炭素基材)および炭化材を撮像し,各材料の3次元デジタルモデルを構築する方法を確立した.炭化材供試体は炭素基材にポリイミド樹脂を含浸し,電気炉で加熱して揮発させたものを用いた.デジタルモデルの内部断面を可視化し両材料について比較したところ,内部形態の明瞭な違いが見て取れ,炭化材内の樹脂炭化による内部形態変化を鮮明に捉えられることがわかった. 構築したデジタルモデルを使って光線追跡シミュレーションを行うための数値解析環境を開発し,輻射減衰係数を評価した.炭化材の輻射減衰係数は,炭素基材のそれと比べ約3倍であった.輻射減衰係数は長さの逆数の次元を持ち,本結果は,輻射輸送効果が炭化材のほうが低くなることを示唆する. 宇宙科学研究所のアーク加熱風洞で炭素基材および炭化材からなる供試体をそれぞれ加熱試験し,内部温度時間履歴を測定した.試験気体として窒素を使い,酸化による表面損耗を排除し,窒化などの質量損失による供試体の変形の影響をできる限り抑えられる実験条件を選定して試験した.測定した各供試体の内部温度を比較したところ,同じ位置での炭化材供試体の内部温度は炭素基材のそれよりも大幅に低くなることがわかった. アーク加熱試験気流加熱環境を数値シミュレーションし,内部温度の時間履歴を解析した.炭素基材あるいは炭化材の実効熱伝導率を固体・輻射熱伝導率の和として与えた.ここで,先述した各材料のデジタルモデルに対して光線追跡シミュレーションで得られた輻射減衰係数を使って輻射熱伝導率を求めている.計算および実験結果の比較から,内部温度履歴を概ね再現できることがわかり,本研究での輻射輸送モデルの妥当性が示された.さらに,炭化した部材は炭素基材が有していた輻射輸送能力を大幅に低減する可能性が高いことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した研究課題要素に対する実験および数値シミュレーションを実施することができているため
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今後の研究の推進方策 |
炭化材および低密度アブレータ(炭素基材に樹脂を含浸させて熱処理していないもの)を中心に炭素基材も含めアーク加熱試験して内部温度を計測する.空気および窒素を試験気流として加熱試験を行い,表面損耗および樹脂熱分解による内部温度履歴への影響を昨年度実験データと比較して明らかにする.固体炭素と気流高温気体との表面反応を考慮した数値シミュレーション環境を整備し,どのように材料内輻射輸送に影響するか調査する.低密度アブレータ内の輻射輸送計算では,樹脂が輻射輸送に関与しない透明媒質であるとし,前年度に評価した炭素基材と炭化材それぞれの輻射熱伝導率を使って動的に変化する材料内部状態の輻射輸送過程をモデル化する.計算結果と実験値と比較し,モデルの妥当性の評価および輻射輸送による熱貫入の影響について調査し,研究課題を総括する.
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