平成29年度は,以下の二つについて研究を進めた.一つは,実験装置を用いたオプティックフローボードを用いた運動推定精度の高精度化についての研究であり,もう一つはオプティックフローから距離を推定する手法についての研究である. 運動推定精度の高精度化についての実験的研究では,前年度までの研究により,実機システムで用いるオプティックフローボード自体に問題があることが分かった.そこで,センサを3DR社製のPX4FLOWに変更し,それに伴って必要なシステムを改良やプログラムの開発を行った.それを用いた実験を行い,以前のセンサボードでの問題点が改善されることを確認した.ただ理論と実験結果の間で,定性的な傾向はかなり改善されるが,定量的にはある程度の誤差が残ることが判明した.その理由として,理論での球状画像面と実験での画像面の違いの影響について調べると共に,ジャイロセンサとの統合することの効果について実験的に調べた.その結果,実験による運動変数の推定値が定性的および定量的に理論値に近づくことを確認し,オプティックフローボードの実用化に向けた課題を解消することができた. また,オプティックフローを利用した自律航行のために,対象物体までの距離を推定する手法について研究した.ここでは,コンピュータビジョンの手法に基づき画像面を分割し,それぞれの領域に対してオプティックフローの広域統合法を適用した.このとき,それぞれの領域からの推定でも一致するはずの運動変数(角速度)に注目することで,対象物体までの距離を推定する手法を提案し,その有効性を計算機シミュレーションで確認した. これらの研究成果は,3件の国際会議および国内会議において発表した.現在は,これまでの成果をまとめて学会誌への投稿するために,原稿を作成中である.
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