研究課題/領域番号 |
15K14255
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
橘 武史 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (50179719)
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研究分担者 |
各務 聡 宮崎大学, 工学部, 准教授 (80415653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小型化学推進機 / 固体推進剤 / 非自燃性 / 酸化剤 / 燃焼制御 |
研究実績の概要 |
本研究は、燃料成分を過多にして自燃性を抑制した独自制作の固体推進薬に、不足分の酸化性ガスを照射して補い、燃焼のON-OFF制御を可能とする衛星用小型固体推進機ロケットを試作し、次世代の新たなミッションに有用な推進機として提案できるようにすることを目的としている。 初年度の研究の結果で確認された、適切な燃料過多配合比の推進薬と液体酸化剤の組合せにおいて、本提案概念が成立することを受け、2年目の28年度は,実機をイメージして酸化剤を供給しながら一定圧力下での燃焼試験が出来るストランド燃焼試験装置を完成させ、提案の概念がどのような条件範囲で成立するかを確認した。 着火は、酸化剤N2Oをそのまま作動流体とした放電によるプラズマアークを推進剤端面に照射することで実行することが可能であることを確認した。しかし、放電を着火後も継続することは、電力を必要とする割に有効性があまり感じられないこと、電極の損耗にもつながることから、着火時のみに利用することとした。 酸化剤の供給方式は、その後の燃焼維持性、燃焼速度に影響を与えることが予想されたので、側面からの供給、上面からの供給、内面からの供給を試み、推進薬の燃焼端面に常に供給される側面供給を基本として実験を行ってきている。この際、供給N2O自己分解が供給路で発生すると、そこで発熱してしまうことに留意し、設計することが必要であることが分かった。 又、ストランド試験と並行して、その結果を反映した条件下で動作させる試作推進機の設計を行い、初号機を完成させ推力試験を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度において、提案する推進機の概念が成立する作動範囲や条件が、独自に製作したストランド燃焼試験装置を用いて確認することが出来、研究は順調に推移している。具体的には、推進薬をそれより一回り大きい耐熱ガラス内部に設置し、その外側に圧力設定用の窒素ガスを流し、内側には酸化剤ガスを流し、酸化剤ガスを必要以上に供給しないで済むような方式を採用によるストランド燃焼試験を実施した。 着火方式については、アーク放電着火方式に加え電熱着火方式でも行えるに至っている。実機では、再着火の際の着火面の形状が平らでない場合を想定すると、アーク着火方式が望ましいと判断される。そのため今後は、燃焼停止時の推進薬の端面を出来る限り水平を保つような消炎を目指し達成できれば望ましいと考えるが、ここまでの研究は、当初の希望想定の通りに進んでおり、目的とする試作機の完成を目指すことに最終年度を充当したい。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、独自に完成させたストランド試験装置を用いて、どのような条件範囲下で目的とする動作が得られるかの研究が行えたので、今後は、ここまで得られた結果をもとに、モデル実機を設計・完成させ、モデル実機による推力特性を含むデータ取得を行う予定である。 又、モデル実機では、内面燃焼の採用も候補になり得ると考えられることから、その場合のストランド試験を追加し、それをうけて、その結果を反映させたモデル実機の試作とその性能評価も、出来れば試みたいと考えている。
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