本研究は、非自然性の固体推進薬(これまでの研究から、燃料成分を過多にして自燃性を抑制し独自に制作したもの)に、不足する酸化剤成分を酸化剤ガスの供給・停止ならびにその流量調整により燃焼のON-OFFを含む制御が可能とすることを主課題とした。この原理をもとに、機構が簡単で信頼性の高い小型の衛星制御用ロケットを試作し、これを用いた燃焼・推力試験を行い、新規なミッションに有用な推進機として確立することを目指して研究は行われた。 まず初めの段階では、衛星用推進機として成立しうる程度の低圧下で、試作された燃料過多配合比の推進薬に液体N2Oを不足酸化剤を補うように供給する場合において、本提案概念が成立することを確認し、次いで、その概念成立適正範囲を絞込み確定させるべく酸化剤を供給しながら一定圧力下での燃焼試験が出来るストランド燃焼試験装置を完成させ確認した。 最終年度までには、ストランド試験と、実機モデルを用いた試験を繰返し行い、以下のような結論を、まとめの成果として得た。 1)ストランド試験においては,燃焼室圧力及びN2O供給方法が同一条件下であれば、N2O供給量の違いで燃焼速度に余り変化はないこと、通常の固体推進薬と同様に圧力の上昇に伴い燃焼速度は速くなることなどが示された。2)実機試験においては、比推力の換算実験値は理論値の3/4近くまで達成されたが理論値に及ばなかった理由として熱損失や燃焼に寄与しないN2Oの存在が考えられること、比推力はN2Oと固体推進剤の質量比が0.9以下では減少し0.9以上ではあまり変化しないという理論計算と同様の傾向を示すことなどが示された。
|