研究課題/領域番号 |
15K14270
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研究機関 | 鳥羽商船高等専門学校 |
研究代表者 |
渡辺 幸夫 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20332033)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 洋上風力発電 / 垂直軸型風車 / CFD / 動揺特性 |
研究実績の概要 |
本研究では、新しい洋上風力発電方式として浮体式両端支持垂直軸型洋上風車を提案するため、風車の流体力学的性質と浮体の動揺・振動特性、また風車と浮体の流体力学的相互作用について研究を実施する。平成27年度は、特に風車に関する部分について主眼をおき、数値解析と水槽実験を実施した。また、浮体の動揺特性については、予備実験を実施し、28年度に予定している実験方法の確認を行った。 本研究において提案する洋上風力発電用風車は、陸上の小型風車として一般的な垂直軸型(VAWT: Vertical Axis Wind Turbine)であり、この形式の洋上風車は現段階で存在しない。まずは、VAWTの一般的な形式であるジャイロミル型(3枚翼)を対象として流体力を予測できる数値解析法を開発した。次に、トルク特性や動揺特性に秀でると予想されるヘリカル式のVAWTについて検討した。ヘリカル式はジャイロミル型を変化させたもので、翼の回転面に螺旋状に角度を付けた形式であり、回転中のトルク変動が少ないことが予想された。双方のVAWT(ヘリカル式については、螺旋の角度も変化させた)に対して3次元の数値解析を実施し、ヘリカル式VAWTは出力係数が低下するが、ジャイロミル型に比べてトルクが安定して得られるため、浮体の動揺が大きくならない可能性が示された。なお、数値解析の精度については、ジャイロミル型の回流水槽実験により検証を実施している。 浮体については簡単な予備実験を実施した。双胴船を模した浮体模型を製作し、抗力型の垂直軸型風車であるクロスフロー型水車を浮体の上に設置して動揺特性を計測する予備実験を行った。風洞水槽実験を用いたこの予備実験で、動揺特性の計測と風見の効果について簡単に検証ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画において、次の3点について取組むことを申請した。(1)VAWTの簡易性能解析・設計法開発(2)VAWTに作用する流体力の詳細検討(3)回流水槽におけるVAWTの性能計測実験、である。 (1)については、二重多流管モデルを用いた解析プログラムを開発し、ジャイロミル型VAWTとヘリカル式VAWTについて性能解析を完了している。この解析法を用いて、回流水槽用のジャイロミル型VAWT模型を設計した。ヘリカル式については解析は完了しているが、模型製作には至っていない。 (2)については、汎用熱流体解析ソフトであるANSYS社のCFXとFluentを用いた三次元解析に取り組んだ。その結果、ヘリカル式VAWTの発生トルクがジャイロミル型VAWTに比べて一周あたりの変動が少なく、浮体に設置する上で、動揺が少なくなる可能性を示すことができた。CFDの精度については改善の余地があるので、28年度も解析を継続する。 (3)については、設計・製作したジャイロミル型風車の性能試験を回流水槽において実施し、開発した解析法の精度検証をおこなった。なお、ヘリカル式VAWTについては、28年度当初に製作して水槽試験を実施する。 これ以外にも、風洞水槽での浮体動揺予備実験が完了しているので、概ね当初に計画した通り順調に研究は進行していといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は浮体式風力発電装置についての波浪中動揺特性の数値解析、および模型による風洞水槽実験を行い研究の総括をする。 (1)浮体式両端支持す直軸型洋上風力発電装置に関する動揺特性数値解析…汎用CFDと開発が完了している二重多流管モデルを用いた風車の発生流体力を入力とした浮体の波浪中の挙動などについて数値解析を実施する。現状では、導入済みのANSYS社のAQWAを用いることとする。CFDでの解析についても検討を行う。 (2)風洞水槽における動揺・振動計測実験…取得済みの三次元切削装置や3Dプリンタを用いて浮体と風車を作製し、風洞水槽で実験を行う。風洞水槽における実験については船体とVAWTとを組み合わせた浮体式両端支持す直軸型洋上風力発電装置模型の定常風速下における動揺・振動を加速度計などで計測する。可能であれば、小型のモーションレコーダーを用いる。またこの水槽では、規則波、不規則波の造波が可能であるので、波浪中の動揺(応答)特性についても検討可能である。 (3)研究総括…これら一連の研究を通して得られた知見について論文投稿、口頭発表など外部への成果報告をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
導入を予定していた3Dプリンタが、同程度の性能で価格が下がったため。また、ソフトウェアの年間ライセンスを他の予算により充当できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は水槽実験を中心とした計画を立てている。その際、3Dプリンタの差額分については、予定していたよりも高精度の加速度センサーやAD変換装置の購入の際に使用する。ソフトウェアの年間ライセンスについては、28年度で予定通り執行する。
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