研究課題/領域番号 |
15K14271
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 弘 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (90188045)
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研究分担者 |
里見 知昭 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (80588020)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 付着 / 粘土 / ネイチャーテクノロジー / バケット / 濡れ機構 / 含水比 / 環形生物 / 非付着性 |
研究実績の概要 |
油圧ショベルは,社会インフラなどの建設現場のみならず,資源開発現場,汚染土壌修復現場など様々な分野で用いられている汎用性の高い重機であり,全世界で最も多く稼働している重機である.油圧ショベルはアームの先に取り付けられたバケットで地盤を掘削するが,作業効率は地盤性状に大きく依存する機械でもある.地盤は大きく砂質土と粘性土に大別されるが,砂質土の場合,油圧ショベルの作業効率は非常に高いが,粘性土の場合,土砂がバケットに付着し,効率が著しく低下することが知られている. 本研究では,自然に学び自然の賢さを上手に活かすネイチャー・テクノロジーに注目した.環形生物に分類されるミミズは,付着性の強い粘性土壌の中でも容易に移動し,行動しているが,これはミミズが体表面から体液を分泌し,土粒子が体表面に付着しないようにしているためであると言われている.そこで,油圧ショベルが作業対象土壌を粘性土と判断した場合,バケット表面で土粒子が付着しやすい部分を自然に濡らすような機構をバケットに付加することに作業効率の低下を防ぐことを目的とする. 平成28年度は,付着低減が可能な最小水分量について実験的に検討した.その結果,粘土の成分にもよるが,0.05g/cm2程度の加水を行えば,付着量を軽減できることが確認された.また材料表面付近の見かけの含水比について検討し,液性限界の値に近い値であることが分かった.最終年度の平成29年度では,作業現場の土の含水比から適切な加水量を算出する手法について検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バケットに濡れ機構を設置し,バケットの材料表面を濡らし,材料表面を局所的に高含水比状態にすることにより土砂の付着量軽減を確認できたこと,多孔質物質を用いて濡れ機構を作成し,実験装置を組み上げられたこと,多孔質物質を流れる水量と付着量の関係を実験的に把握できたこと,付着量の軽減が見られる最小水量を実験的に把握できたことなどを総合的に判断すると,概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに提案する濡れ機構の妥当性を確認することができた.また土砂の付着量が大きく低減される最小の加水量を実験的に把握することができた.今後は,現場適用性を考え,作業現場の土の含水比から適切な加水量を算出する手法について検討する予定である.これは,当初計画してものとほぼ同じであり,特段の変更点はない.
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次年度使用額が生じた理由 |
土砂の付着は,材料表面の含水比を局所的に高めることで低減できることは確認されたが,必要以上に高含水比状態にすることは作業効率の低下を招くことになり望ましくない.そので,付着を低減できる必要最小限の水量を把握する必要がある.平成28年度は加水量が0.05g/cm2程度あれば付着が低減できることを確認したが,実験で確認した土の性状は限定的であり,より広範囲の土壌に対して実験を行い,必要最小限の加水量を現場土壌の含水比から推定する手法の確立が求められる.この検討は29年度に実施する.
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次年度使用額の使用計画 |
粘度成分を変えた付着実験を行い,付着低減の効果が現れる必要最小限の加水量を把握し,現場土壌の含水比から必要最小限の加水量を推定する手法を確立する.
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