本研究では、休廃止鉱山の坑廃水処理や一般の工業排水処理に適用可能な亜鉛とカドミウムの超集積植物ハクサンハタザオを利用した新たな亜鉛、カドミウム含有坑廃水の処理方法を提案することを主目的としている。本年度はハクサンハタザオの水耕栽培系を用い模擬廃水の水質浄化についての実証を行うとともに、坑廃水処理プラントの基本設計の実施、植物体中に集積された亜鉛とカドミウムの再生資源としての机上評価を行った。 ハクサンハタザオの水耕栽培苗を設置した容器中にカドミウム濃度を0.05mg/L、亜鉛濃度を1.0mg/Lの溶液を希釈率0.0125(1/hr)で連続供給したところ、容器出口のCd濃度は0.025mg/L、亜鉛濃度は0.6mg/L程度まで低下した状態で500時間以上安定して処理され、カドミウムの排水基準以下まで低減させることができた。またカドミウム濃度を2倍と1/2倍として同様の実験を行ったところ、いずれも初期濃度の約1/2の濃度までカドミウム濃度を低下させた状態で安定した処理が行われた。この結果をもとに0.09mg/Lのカドミウムを含む鉱山廃水の処理プラントを設計した場合、処理水のカドミウム濃度を排水基準値の1/3である0.01mg/L程度まで低下させるためには水深 30cmで広さ 1200m2(400m2×3基)の処理槽が必要になると試算された。また処理プラントから発生するカドミウムと亜鉛を含むハクサンハタザオを焼却処理することにより、亜鉛品位10%程度の焼却灰が得られ、含有されるカドミウムを含め亜鉛製錬所で金属として回収可能であることが示された。 以上の結果より、従来のアルカリ中和-逆中和の代替となりうる亜鉛とカドミウムを含む坑廃水に対する植物を利用した処理方法の基礎が確立できたと結論づけられた。
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