研究課題/領域番号 |
15K14274
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
楠本 成寿 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (50338761)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 引力探査 / 寄与率 / 重力偏差テンソル / 構造境界傾斜角 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、引力探査を提案することである。引力の鉛直成分のみを考慮する重力探査が、これまで良く用いられてきたが、鉛直成分だけでなく、水平成分も構造推定に考慮できる新しい探査法を考案する。これが引力探査である。 初年度では、まず、引力ベクトルの水平成分と鉛直成分を用いて、原因物体の位置を推定する手法を考案した。幾つかのモデルについて数値計算を行ったところ、引力場を乱す原因物体の位置を正確に推定することが可能であることが示された。この手法は、2次元問題解析時と3次元問題解析時で解の形が異なり、前者は線形問題として、後者は非線形問題として問題を解くことになることが明らかにされた。また、ある地下構造が地表で観測される引力にどの程度寄与しているかの定量的に評価できる「寄与率」の提案を行った。この寄与率によって、実フィールドデータを見た場合、堆積盆地の形状がより鮮明に見えるようになることが示された。これらの研究の基礎となる、任意形状物体の引力の水平成分を計算する解析解の導出もおこなった。この解は、原因物体を水平薄層の集合体で表現するTalwani (1965; Geophysics)のモデルに基づいている。本研究による解の導出により、Talwani (1965; Geophysics)に従って構築したモデルを用いて、重力異常だけでなく、引力の水平成分の計算も行えるようになった。 これらの他、次年度の研究の準備として、重力偏差テンソルを用いた研究のレビューをおこなった。また、既存研究で示される手法の評価や発展させた解析手法(例えば、重力偏差テンソルの固有ベクトルと水平勾配の組み合わせによる、構造傾斜角推定手法等)の提案等も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた基本的な部分については、成果を出せたと考えている。しかしながら、実データへの適用とその解釈が十分とは言えず、論文としての公表が遅れている。 引力探査と並行して研究を進めた重力偏差テンソルの研究の方は、主に海外で多くの研究がなされており、お手本が多く存在することから、研究も大きく進み、論文発表も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度に提案した引力探査手法を実データに適用し、フィールドデータに対する事績を挙げていくことが重要であると考えている。フィールドとして、北海道中部の堆積盆地群をターゲットに、解析を進めていく予定である。また、この際には、重力偏差テンソルを用いた構造解析も実施・比較し、両者の長所と短所を明らかにしてゆきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果は出たものの、論文作成を行う時間をうまく工面することができなかった。そのため、英文校正費用、出版費用(オープンアクセス)に残金が生じ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年は、昨年度の研究成果を積極的にオープンアクセスジャーナルに公表してゆく。
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