研究実績の概要 |
重力探査は,鉱床,油田といった様々な地下構造調査のために広く用いられてきた。近年は,重力偏差計を用いた重力勾配テンソルの計測が精力的に行われてきており,テンソルを用いた半自動解釈手法やインバージョン手法の開発が積極的に進められてきている。しかしながら,テンソル6成分を用いた解析はそう多くはない。多くは,gzzやgzx, gzyを用いた解析であり,宝の持ち腐れの状態となっている。また,重力異常の原因物体の水平引力成分(gx, gy)は,空中重力探査時の重力計の姿勢制御に用いられるだけで,地下構造解析に必要とされることが少ない。そのため,これまでほとんど研究対象になってこなかった。 本研究では,gzだけではなくgxやgyを用いた探査方法の構築と,これに偏差テンソルを加えた探査法の基礎的研究を行った。研究では,任意形状物体のgx, gy成分を計算する解析解の導出(フォワード手法),gx, gy, gz成分を用いた構造推定手法(インバージョン手法)の開発,重力偏差テンソルの固有ベクトルを用いた断層傾斜角推定手法の開発を初年度から2年目にかけて行った。3年目は,より一般的なインバージョン手法の開発,これまでの研究や重力偏差探査の根幹をなす構造の疑似深度とパワースペクトルの関係,フィルタリング手法についての研究を進めた。重力偏差テンソル6成分とgx, gy, gzを用いたインバージョン手法の開発はまだ完成していない。一方,後者2点については,(1) 鉛直微分gzzを除いて,全ての重力偏差テンソル成分は,方位依存性があり,疑似深度推定やフィルタリングに従来の方法が使えない (2)この新しい問題を解決するために,方位依存性を考慮したフィルタリング手法の開発を行った。
|