前年度作成した高分子ゲル埋包型リチウムイオンシーブに対して、常温におけるリチウムイオン吸着特性を明らかにしたので、冷却前の地熱水への適用を想定して、集積体の温度耐性を検討した。化学反応では不可能な中性領域においてマンガン(II)を酸化する真菌Paraconiothyrium sp.によるバイオミネラリゼーションによって合成したマンガン酸化物の焼成体は、500度Cでの加熱過程を経て合成しているため、吸着温度70度Cまでの範囲では構造も特性も変化しないことは確認できているが、アルギン酸ゲルの物理的化学的温度耐性について、およびゲル内でのイオンの移動速度については、要検討項目であった。物理的化学的温度耐性については、50度Cまでは安定性が維持できることが確認できたが、50度C以上になると、ゲルの安定性が損なわれることがわかった。50度C以下の範囲であれば、吸着速度、吸着容量、再生性、選択性に遜色はないといえる。ゲル内でのイオンの移動速度については、温度が高くなると速くなると考えられる。ゲルの物理的安定性を保つ温度範囲において、なるべく高い温度を用いるのが、最適といえる。地熱水の温度には分布があり、画一的には最適条件を提案できないが、原水温度で約50度C以上の地熱水中に含まれる高濃度リチウムイオンを回収する場合には、少なくとも温度を約50度Cまでに温度を下げて、本高分子ゲル埋包型リチウムイオンシーブ適用することが最適といえる。また、Paraconiothyrium sp.が放出するマンガンペルオキシダーゼを含む粗酵素液の鉱業利用として、超難処理炭素質金鉱石の有機炭素を分解する前処理段階に活用できる可能性を示した。
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