本研究は,埋蔵量が豊富な褐炭などの低品位炭を利用する上で課題となっている自然発火や反応熱およびガス生成特性を明らかにすることを目的として実施した。一般的なTG-DTA等を用いた分析には長期の測定時間を要するため,本研究では石炭の発熱特性やガス化特性を高圧雰囲気中において急速加熱によって測定する室内用の小型測定装置を開発し,短期間に低品位炭の特性を特定するシステムを構築した。 研究実施内容としては,高圧を受けながらレーザー光を透過させ,内部に設置した石炭試料を加熱する特殊光学フィルターを組み込んで新たに開発した容積160ml,耐圧2.1MPaの可視化圧力セルおよび中国産の低品位炭試料を用いて高圧・高濃度CO2雰囲気下でのレーザー光照射による急速加熱実験を実施し,残存試料とセル内のガス分析を行った。このとき,レーザー光を透過しつつ耐圧性能を有する光学フィルターを組込んだ構造によって,2.5MPaまでの高圧雰囲気中での石炭試料の急速加熱に成功している。また,O2ガス量を1.5mmol (33.6ml-std)に固定した場合,およびO2のモル分率を0.033(O2濃度3.3%)に固定した2種類の条件を設定し,レーザー光による2分間の石炭試料の加熱に対する酸化反応とガス化特性に関する一連の実験を行った。0.6MPaまでの圧力範囲では,H2,COおよびCH4の累計ガス生成量についての検討を行った。また,0.6~1.6MPaの圧力条件では,石炭1gあたりH2が約250ml,CH4が約65mlおよびCOが約3200mlのガスがそれぞれ生成されることを明らかにした。さらに,石炭の酸化およびガス化反応を10の化学反応式としてまとめ,CMG-STARSによる数値シミュレーションを実施した結果,実験結果を概ね再現できることに成功し,地下ガス化等の数値シミュレーション予測の基盤を構築できた。
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