研究課題/領域番号 |
15K14282
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 早苗 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70127611)
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研究分担者 |
小菅 佑輔 九州大学, 高等研究院, 助教 (00700296)
伊藤 公孝 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (50176327)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動的応答 / 乱流 / 位相空間 / 加熱と乱流の直接結合 |
研究実績の概要 |
本研究は「乱流に駆動される熱流束などが加熱入力に直接依存する」かどうかを理論的に解明することを目標とする。本年度は問題設定を行い、(1)熱流などが、空間勾配に加え、時間変化及び加熱入力に依存するという仮説をもとに、勾配-輸送関係にヒステリシスが表れることと矛盾しないことを示し、それらの定式化を進展させる。(2)その新しい効果を繰り込んだ乱流輸送のモデル方程式を構築すること、等の問題を設定した。 具体的な成果として次のような進展を得た。(1)加熱変調に対する熱流の急変、即ち勾配-輸送関係にあらわれるヒステリシス現象について、実験結果を世界的に博捜し、レビュー論文をまとめて成果を発信した。[S.-I.Itoh, Plasma Fusion Research (2016) 印刷中。] ヒステリシス現象を探索する方法も示した。[K. Itoh, et al. J. Phys. Soc. Japan 85 014501 (2016)など。](2)揺動の突発的な成長に関する成果を得た(M. Lesur, et al., Phys. Rev. Lett. 116 015003 (2016)など)。位相空間における新しい駆動力として運動論的非線形性を取り入れたモデルを導出した。初期に生じた揺動が初期周波数の2倍程度になった場合に、元来の周波数をもつ揺動が突発的に生じる機構を見出した。得られた理論予測は大型ヘリカル装置を用いた実験で観測されている現象をよく再現することが明らかとなった。さらに、「乱流に駆動される熱流束などが加熱入力に直接依存する」機構が、従来謎とされていた「閉じこめ時間に対する水素同位体効果」の一因であるとの着想に発展し、論文を取りまとめて投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の個別目標に対して成果があがっている。すなわち、熱流パルスの高調波が拡散的振舞を破ることや、運動論的非線形効果を取り入れたモデルを提唱することができた。実験観測との比較にも着手することができている。これらの成果を踏まえ、当初の目標に対しておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
輸送ヒステリシスが表れること核融合閉じ込めに置ける未解決問題である閉じ込め時間の同位体効果などとの関連を調査する。平成28年度に開催される核融合エネルギーIAEA会議などで成果を発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究の成果が予想以上に進展し、当初の解析対象であった電子サイクロトロン周波数波動のモジュレーション加熱実験に加えて、中性粒子ビームやイオンサイクロトロン周波数波動のモジュレーション加熱実験を対象に、「乱流に駆動される熱流束などが加熱入力に直接依存する」過程を実験で検証する方法を示す事が可能になった。国際的にも、米・欧・中・韓等の研究者達からの興味も深まって来た。その結果、国際的な実験家との交流を強化し、理論へのフィードバックをより包括的に行う事が可能になった。そこで、研究計画における実験との比較を担当する分担者伊藤公孝を平成28年度に国際会議に派遣し、国際的な実験家との共同研究を包括的に実施させる事とした。具体的には、平成27年度の分担金と28年度の経費を統合させ使用する事で、国際的共同研究をより充実したものとする事とした。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
分担者伊藤公孝を平成28年度に国際会議に派遣し、本テーマにかかわる国際的な実験の進展を調査させるとともに実験家との共同研究を包括的に実施させる。具体的には、平成27年度と28年度の分担金を統合して使用する事で、ヨーロッパ物理学会に参加させ、ドイツ、英国、フランス、スペイン、等の関連研究者との国際的共同研究やデータの探査を包括的に行わせる。その成果に立脚して論文をまとめ研究成果を発信する。
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