研究課題
磁化プラズマの輸送を制御するためには乱流の理解が不可欠である。プラズマ中にはミクロ、メゾ、マクロスケール揺動が共存し、お互いが相互作用する事で乱流状態が決まる、という多スケール結合乱流という新たな描像が生まれている。これまで周波数領域における多スケール乱流の観測が行われてきたが、理論モデルとの直接的比較の為には波数空間における乱流の観測、および波数空間多スケール乱流の動的振る舞いを実験的に検証する事が急務の課題である。本研究ではマイクロ波コムを用いた前方/後方散乱計測により、波数空間における密度乱流揺動の同時多点計測を時間分解能1マイクロ秒以下で実現する事を目的とする。本研究では3カ年でマイクロ波周波数コム散乱計を開発し、九州大学の直線プラズマ装置にて密度乱流揺動の多波数同時計測を実証する。更に波数スペクトルの動的応答を観測する事で、突発的現象における波数空間でのエネルギー移送の向きを観測可能である事を示す。平成27年度はマイクロ波周波数コム受信器を導入した。周波数コム状 (12-26 Ku-Kヂュアルバンド、コム間隔0.5GHz)のマイクロ波をプラズマ中へ入射し、その後方散乱波を受信した。80Gs/sの超高速ストレージオシロスコープを用いて送受信号をディジタル化した。取得データにディジタルフーリエ変換を適用する事で波数領域29点の密度揺動スペクトルを得た。後方散乱の特徴として散乱波の周波数がプラズマの流れによりドップラーシフトを受ける事が挙げられる。このドップラーシフトからプラズマ流速が分かる。プラズマの周方向流に感度を持つ配位で計測を行い、検出される密度揺動の波数を変化させても同一のプラズマ流速が得られる事を確認し、散乱波計測の検証に成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究におけるマイクロ波散乱計測で実験上問題となるのは、真空容器による反射波である。そのようなプラズマに無相関な反射波は受信アンテナに混入し、大きなノイズ成分を形成する。本研究では散乱波のドップラーシフトに着目し、プラズマの同一径方向地点の観測からは、同一の周方向プラズマ流速が得られるという原理を用いて反射波の混入度合いを評価し、受信アンテナの対向面に吸収体を設置する事で反射波の影響を十分に減衰させる事が出来る事を明らかしている。また、揺動の波数空間同時多点計測には80Gs/sの超高速ストレージオシロスコープによるデータ取得が必須であるが、そのデータは30GB/shotという巨大なものである。このような巨大データを解析できるようなデータ解析環境の構築が完了している。以上より、研究は順調に進展しているといえる。
本研究は3カ年計画であり、2年目となる平成28年度は、開発したマイクロ波周波数コム散乱計を用いて、多くの観測データを蓄積し、密度乱流揺動の多波数同時計測を実証する。九州大学PANTA装置にて実験を行い、これまでの後方散乱波に加え、前方散乱および90度散乱したマイクロ波を同時計測する事で広い波数領域に渡り密度揺動の波数スペクトルを取得する。現状はドップラーシフト計測のため時間分解能は0.1 ms程度だが、条件付き平均法を用いれば時間分解能を大幅に短くする事が出来る事が明らかになっているので、本手法を用いて時間分解能1マイクロ秒を達成する。更に、プラズマが時間的に大きく変動する現象を用いて波数スペクトルの動的変動を観測する事を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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