研究課題
本研究ではマイクロ波周波数コムを用いた前方/後方散乱計測により密度乱流揺動の波数スペクトルを高時間分解能で多点計測することを目的とする。平成28年度は直線乱流プラズマ実験装置を用いて後方散乱計測を実施した。カットオフ層におけるマイクロ波の後方散乱波はプラズマの流れの影響により周波数がドップラーシフトを受ける。入射マイクロ波ベクトルとプラズマ流れベクトルとの間の角度を変えて散乱マイクロ波のドップラーシフトを計測することで散乱波計測の検証を行った。計測した散乱波はプラズマ流れによるドップラーシフトを受けており、正しく散乱波計測が行えていることが確認された。カットオフ層における散乱波計測の成功を受けて、アンテナの入射角をスキャンすることで3つの異なる波数での密度揺動を観測した。波数分解能は入射マイクロ波のビーム径に依存する。本実験ではアンテナとしてホーンアンテナを利用している事、周波数が12-26 GHzと低い事から入射ビームは大きく広がっていると予想される。現状のビーム分布を計測し波数分解能を評価するとともにレンズやミラーの導入によりビーム径を絞る事を今後検討する。時間分解能は揺動の周波数スペクトルに依存し、直線プラズマでは支配的な周波数成分が数kHzであるため、1 ms程度である。これまで精力的に行われてきた周波数領域における乱流の精密観測に加え、波数領域の精密観測が加わることで磁化プラズマ乱流の時空間多スケール結合構造が明らかになり乱流輸送の理解の深化に大きく寄与することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
マイクロ波周波数コムを用いた後方散乱計測が進展している。ビッグデータを取り扱う環境が整備され密度揺動の波数スペクトルの一部が観測されている。並行して密度揺動の空間多点周波数スペクトルの解析が研究協力者の修士論文としてまとめられており、解析手法の開発も完了した。以上より、研究は順調に進展していると言える。
上記の研究成果でも述べたように、開発した散乱計の波数分解能を評価するとともに、ミラーやレンズを用いた光学系によりマイクロ波のビーム径を絞る事によりより高い波数分解能の実現を試みる。また、後方散乱に加え前方散乱計測を行いより広い波数空間における密度揺動スペクトルの観測を行う。後方散乱と前方散乱は同時計測可能なため、広い波数空間における乱流スペクトルのダイナミックな振る舞いを抽出する。計画の最終年度となる本年は、これら開発した手法を種々の乱流状態に適用する事で乱流のスペクトルと平衡プラズマ分布との相関関係を求める事を目指す。
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Plasma and Fusion Researc
巻: in press ページ: in press
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Nuclear Fusion
Review of Scientific Instruments
巻: 87 ページ: 043505
10.1063/1.4945258