研究課題/領域番号 |
15K14284
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
長坂 琢也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40311203)
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研究分担者 |
田中 照也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30353444)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 廃炉・リサイクル技術 / 接触線量率 / 高純度化 / 高温強度 |
研究実績の概要 |
前年度は高精製金属バナジウムの溶製を行い、長半減期の放射性核種を生成するモリブデンの低減に成功したものの、バナジウム合金の機械特性を劣化させる酸素不純物が従来の5倍となってしまった。アルミテルミット還元が不十分であったことが酸素不純物の増加の原因であることを明らかにし、低モリブデン濃度と低酸素濃度が両立した高精製Al-V合金の作製までを行った。 今年度は高精製Al-V合金から高真空電子ビーム溶解により高精製金属バナジウムを製作した。高精製バナジウムに高純度クロム、高純度チタンを低下し、それぞれの濃度を系統的に変化させた18種類のモデル合金をアーク溶解により作製した。アーク溶解ボタンを真空封入し、熱間鍛造の後、冷間圧延を行って組織観察用試験片、硬さ試験片及び引張試験片を作製した。まず、加工後の熱処理による硬さの回復と再結晶特性を明らかにした。低放射化のためにチタン濃度を従来の4%から1%に減らした合金においても、従来同様1200℃熱処理材では1000℃熱処理材と比較して硬化を示した。従来の4%チタン合金における研究から、これは1000~1200℃ではTi-CON析出物が分解し、進入型不純物による固溶硬化が大きくなっていく過程を示している。すなわち、チタンを減らした合金においても1000℃までチタンがスカベンジング効果を発揮する挙動は変わらず、合金の延性が保たれることが期待できる結果を得ることができた。 一方、揮発性の放射性不純物の除去について検討するため、バナジウム合金をAr中アーク溶解で再溶解し、Arを含有する試料を製作した。一方、同じくAr中アーク溶解にて、揮発性不純物であるMnを0.01%及び0.1%添加した試料を作製した。これらの合金を高真空中電子ビーム溶解による精製実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は高精製金属バナジウムの溶製で予期せぬ酸素不純物上昇が起こり合金試作が遅れてしまったが、その後の試作法の改良により遅れを取り戻した。チタンを従来の1/4まで減らしても、ほぼ同様の加工後回復、再結晶特性を示すことが分かり、当初の目論見どおり低放射化と機械特性維持の両立が期待できることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
チタン濃度を下げても合金の延性を確保できる見通しを得たが、チタンの固溶強化が失われるために強度低下が懸念される。そこで、低放射化特性を損なわず固溶強化が見込めるクロム濃度の増加で強度低下を補うことを考える。今後は、強度、延性を引張試験により評価し、従来材と同様の機械特性を維持しつつ、低チタン化することを目指す。 高真空中の精製で希ガスアルゴンや揮発性のマンガン不純物は低減できるが、バナジウムより蒸気圧の小さいニオブ、モリブデンは、バナジウムの蒸発により逆に濃縮されることが予測される。今後は精製試料の不純物分析を行い、その結果にもとづき揮発性不純物の低減の挙動とその限界、そして不揮発性不純物の濃縮とのトレードオフの関係を明らかにする。最終的には具体的に核融合炉で使用後、冷却・保管期間中のどの時点で脱ガス精製をするのが効果的なのか、再利用までの期間をどこまで短縮できるのか、さらに複数回の再利用の可能性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費研究で試作した高純度バナジウム合金の加工後回復特性、再結晶特性について、結果の解析及び研究のまとめ方について研究協力者と打合せをするための旅費として使用したが、打合せが3月であったために支払いが4月となり次年度に繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
理由で述べたとおり、既に打合せ旅費として全額使用した。
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