研究課題/領域番号 |
15K14285
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
星野 毅 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 ブランケット研究開発部, 上席研究員(定常) (80370469)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核融合炉 / リチウム / 資源 / 分離回収 / 分離膜 / イオン伝導体 / セラミックス |
研究実績の概要 |
国際協力にて開発中の新たな発電炉である核融合炉は、トリチウム燃料製造や発電に必要な熱を作り出すリチウムを大量に使用するため、使用済リチウムイオン電池からの新たなリチウム資源回収法に関する研究開発を行った。 研究代表者は、これまでに、イオン伝導体をリチウム分離膜とした、海水からのリチウム資源回収の基盤技術を確立した。昨年度(平成27年度)は、リチウム分離膜としてイオン伝導体Li0.29La0.57TiO3(LLTO)を選定したが、高いリチウムイオン伝導率が得られる高温使用環境下における課題も明らかになった。 そこで、平成28年度は、常温でも高いリチウム回収効率が得られる条件探索を行った。これまでの試験では、中性や酸性のリチウム含有液をリチウム原液として用いたが、アルカリ性の使用済リチウムイオン電池の溶解液をリチウム原液として用いた場合は、中性または酸性のリチウム原液より1000倍以上の早いリチウム回収性能を得た。 本条件におけるリチウム移動の確認のため、回収液中のリチウム濃度をICP-AES及びICP-MSにて分析した。その結果、電池溶解液中のリチウムはLLTOイオン伝導体を透過し、回収液側へほぼすべて移動したことを確認した。一方、電池溶解液中に含まれるリチウム以外の不要元素はLLTOを透過せず、電池溶解液中に留まっていた。よって、電池溶解液中に含まれるリチウムを、従来よりも短時間で回収液側へ移動させることに成功し、当該年度の目標を達成した。 次年度(平成29年度)は、よりリチウム回収効率に優れた実験条件の探索を行うとともに、核融合炉のトリチウム増殖材料(リチウム含有セラミックス)の原料である炭酸リチウムを高純度で生成する手法を確立することを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リチウム分離膜として選定したイオン伝導体Li0.29La0.57TiO3(LLTO)は、様々なリチウム含有液に対する耐久性は高いが、リチウムイオン伝導率がNASICON型等の他のイオン伝導体より低いため、常温におけるリチウム回収速度が遅い課題を有していた。 この課題解決のため、様々な実験条件の最適化を試みた結果、これまでの試験では中性や酸性のリチウム含有液をリチウム原液として用いたが、アルカリ性の使用済リチウムイオン電池の溶解液をリチウム原液として用いた場合は、中性や酸性のリチウム原液と比較し、1000倍以上の高いリチウム回収性能が得られることを明らかにした。特に、使用済リチウムイオン電池溶解液中に含まれるリチウムのほぼすべてを回収液側に移動することに成功したことは新たな研究成果であり、平成28年度の研究計画を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究成果では、イオン伝導体Li0.29La0.57TiO3(LLTO)が常温におけるリチウム分離膜として適していることを明らかにした。 そこで、平成29年度は、よりリチウム回収効率に優れた条件の最適化を、インピーダンス測定等の電気化学的評価手法やコンピューターシミュレーション等を活用して行う。リチウム回収性能の向上に有効な知見を得た後、使用済リチウムイオン電池からのリチウム資源回収に適した新たなイオン伝導体の探索を行い、核融合炉のトリチウム増殖材料(リチウム含有セラミックス)の原料である炭酸リチウムを高純度で生成する手法の確立を目標として研究を推進する。
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