国際協力にて開発中の新たな発電炉である核融合炉は、トリチウム燃料製造や発電に必要な熱を作り出すリチウムを大量に使用するため、使用済リチウムイオン電池からの新たなリチウム資源回収法に関する研究開発を行った。 研究代表者は、これまでに、イオン伝導体をリチウム分離膜とした、海水からのリチウム資源回収の基盤技術を確立した。本技術を応用し、本研究では、海水の代わりに使用済リチウムイオン電池材料の溶解液を用いてリチウム資源を回収する、新技術開発を行った。 平成27年度~平成28年度の研究成果より、イオン伝導体としてLi0.29La0.57TiO3(LLTO)を用いることで、電池材料溶解液から、短時間でほぼ100%のリチウム回収率が得られることを明らかにし、リチウム回収条件の最適化を達成した。 平成29年度は、リチウム資源回収プロセスの最終段階となる、得られたリチウム回収液から核融合炉材料の原料となる高純度炭酸リチウムを生成する手法を探索した。従来は、得られたリチウム回収液に炭酸ナトリウム溶液を混合し、沈殿反応より炭酸リチウムを得たが、食塩水中に炭酸リチウム沈殿が生じるため、食塩の除去に時間を要した。そこで新たな手法として、リチウム回収液に炭酸ガス(CO2ガス)をバブリングする手法を発案した。 大気中に含まれるCO2ガスでも炭酸リチウムを生成可能だが、CO2ガス濃度を数%に高めることで、より短時間で、かつ高純度(純度99%以上)の炭酸リチウムを生成することに成功し、当該年度の研究計画を達成するとともに、使用済リチウムイオン電池からリチウム資源を回収する、一連のプロセスに関する基盤技術を確立した。
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