研究課題/領域番号 |
15K14288
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
原田 雅幸 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (60133120)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トリチウム / 濃縮 / ナノ空間 / 水素結合 / 福島原発事故 / 吸着 |
研究実績の概要 |
トリチウム水の模擬として重水を使用した。重水はD2Oで購入、軽水に薄め水素交換を十分行ったものを調整し、HDOとしてトリチウム水HTOの模擬とした。軽水素と重水素の比は1としたが、平衡があり、約8%のD2Oが存在する溶液となっている。最初に吸着状態を調べるために、H-NMRを測定した。希釈溶液に各種のゼオライトに吸着させ、ろ過した溶液についてH-NMRを測定した。測定結果はこれまでの報告から軽水のH-NMRでは3種類の異なった化学シフトを示す状態の水が観測されているが、吸着させた場合これらの比率が異なっていることが分かった。同時にD-NMRも測定したが、得られたスペクトルの強度に変化は見られなかった。すなわち少なくとも異なった細孔径を持ったゼオライトではその細孔径によって吸着様式が異なっていることが示唆された。用いた系では重水素の濃度が非常の多いことから重水素の吸着に差が表れなかったと考えた。そこで、福島サイトのトリチウム濃度の約1億倍の濃度で作製した模擬溶液を使ってゲルのような吸着を行うと考えられるポリビニルポリピロリドンについてD核種の吸着について行った。得られたD核のNMRシグナルは吸着前の強度と変化はなかった。すなわち選択的な吸着は起こらなかった。吸着剤がナノオーダーの空間組成ではなく数マイクロオーダーの空間を持っていたためと考えられ、当初考えていたナノオーダーの空間組成を持った吸着体の選定が必要と考える。また、種々の測定から、蒸留水に含まれるHDOがNMR測定できることが判明した。福島の滞留水と比較すると蒸留水に含まれるHDOは60万倍多いと計算される。したがって次年度はトリチウムの模擬として蒸留水のHDOを吸着してNMR測定することができることが判明した。また、トリチウムを使って測定できるように環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初考えていた以上に模擬物質であるD核のNMR測定が容易に可能であることが判明した。また模擬溶液はサイトの汚染水よりも60万倍濃いものであるが、これを吸着しなければ当初の計画を満足できないので、模擬試料としては適当であると考える。でき得ればトリチウムを使った試験を行うことが希望であったが、測定できる環境が整った。
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今後の研究の推進方策 |
吸着剤の選定を行う。吸着剤の候補はゼオライト類、粘土、ポーラスシリカ等を予定している。またナノ物質の代表であるカーボンナノチューブ類について行う。さらに、温度感音性を示すNIPAMと表記されるイソプロピルアクリルアミドがある温度以下で疎水性になり、その塊がナノ空間であるとされているので、この誘導体について試験を行う。これらについて有望な吸着剤を選定し、共存する金属イオンの影響、吸着の温度及び酸濃度依存性等の測定から吸着の様式を解明する。 有望な吸着剤の選定が行われた場合は、トリチウムを使った試験を行い、その有望性を検討する。
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