研究実績の概要 |
「蛍光ガラス線量計」の材料として用いられている銀活性リン酸塩ガラスを単なる個人あるいは環境線量モニタリングとしての応用だけでなく,材料が有する可能性を生かし,これに本申請者独自の提案を導入することで三次元(3D)イメージ蛍光ガラス検出器の開発を行った。 一般に,この蛍光ガラス材料は,各種放射線照射後,単一の紫外線(UV)励起によって青色・橙色2波長領域でのラジオフォトルミネッセンス(RPL)が観測される。従来,中心波長630 nmの橙色RPLが線量測定に用いられてきている。本研究では青色RPL使用での新たな成果を得た。 (1)橙色RPLの代替として中心波長460 nmの青色RPLを用いることで橙色RPLを使用する際に必要なRPL測定前の100℃,30分程度の「プレヒート工程」が不要となった。この成果は2015/3/6に「ラジオフォトルミネッセンスガラスのラジオフォトルミネッセンス測定方法及び装置」で特許を取得した(特許番号:第5707531号)。(2)青色RPLの使用は,書込み,読取り,プレヒート,消去(再利用)の全工程を光学処理だけで代替可能となった。(3)青色RPLの蛍光寿命は5 ns以下と橙色RPLの蛍光寿命(2300 ns)に比較して桁違いに短いため,今後リアルタイムでの線量や線量率測定への応用にも繋がることが確認できた。(4)さらに,RPL蛍光の読取り方法として本研究者の提案による2つの機能を有する読取機を構築した。1つは蛍光ガラスを直径10 cm程度のディスク形状検出器に加工し,高速回転(最大3200 rpm)させながら1μm以下に集光したUV光照射で迅速に微弱青色RPL信号を検出しイメージ再構築が可能となった。もう1つは,高速性は前者には劣るが,空間分解能が数百nm(縦,横方向)と格段に高く,放射線核飛跡のイメージング測定も可能な共焦点レーザー顕微鏡を開発した。
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