研究実績の概要 |
本研究では、自然循環による溶融炉心冷却システムとナノ流体による限界熱流束向上そして自然循環流量促進効果を組み合わせることにより無電源による溶融炉心冷却を目指している。そのため、ナノ粒子、水そして気相で構成される多相ナノ流体の自然循環流量の評価に必要な多相流体のボイド率、圧力損失を評価するモデルを作成し、試験データと比較する事により、多相ナノ流体の自然循環量を予測する手法を構築し、その手法により溶融炉心冷却システムの性能を評価する。2015年度は、詳細な研究計画の策定、試験装置の設計製作、多相ナノ流体の自然循環流量予測の基礎となる水―空気二相流の自然循環試験そして予測モデルの構築を行った。溶融炉心冷却システムは色々な形状の流路で設計される可能性があるので、円管(内径10,25,36mm), 矩形管(1辺 10,25mm), テーパ管(拡大管、縮小管)の試験体を用い試験を行った。また、自然循環流量とともに単相流そして二相流における自然循環流路圧力損失分布の測定を行った。作成した自然循環流量予測手法と試験データを比較し、流路形状に依存することなく、予測が可能であることがわかった。流量範囲によって予測精度が異なっており、圧力損失分布を詳細に検討した結果、予測精度を改善するためには二相増倍係数モデルの改良が必要なことがわかった。ナノ粒子としては実機での使用実績などを踏まえてTiO2を選択した。多相ナノ流体試験については、ナノ流体作成方法、試験方法、ナノ流体の廃棄方法について方法を確立した。また、自然循環予測に必要なナノ流体の密度、粘度、表面張力は、試験時にナノ流体をサンプリングして測定する方法を検討し、不透明液体でも測定可能な毛管上昇方式表面張力計、キャンノンフェンス逆流型粘度計を整備した。
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